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ラグビー日本代表、5-60完敗の真相 アイルランドで“ダブリンの屈辱”はなぜ起きたか

アイルランド戦で見られた日本にとっての課題は【写真:(C)JRFU】
アイルランド戦で見られた日本にとっての課題は【写真:(C)JRFU】

日本にとっての課題はコンタクトの強さと技術

 むしろ課題になるのは、アイルランドがアタックで見せたコンタクトの強さと技術だ。7月には2019年W杯の雪辱を果たしたアイルランドだが、今回も日本代表の戦い方を攻守でしっかりと分析していたのは間違いない。

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 攻撃を仕掛けたアイルランドの選手は、まずしっかりと2人のディフェンダーの間を突くか、1対1で衝突するのかを選択してコンタクトしていた。テストマッチデビューから3戦連続で先発したCTBシオサイア・フィフィタ(近鉄)は「フィジカルの強いアイルランドに対してダブルタックルを決めきれず、そこでオフロードパスを通されるなどしてトライに繋がってしまった」と振り返っているが、パワーだけではなく、ボールを持って仕掛けた選手が防御の間隙を突くことで、タックルされてもボールとボディーをしっかりとコントロールし、1対1では日本選手が低いタックルでくればオフロードパス、ボールを狙って上半身にタックルしてくれば重心を落として相手より低い姿勢で体を押し込んできた。2週間前に23-32で敗れたオーストラリアも、ハイパントキャッチ、コンタクトの姿勢など、ベーシックかつ細やかなプレーで日本にはない質の高さを見せたが、アイルランドのコンタクト技術も日本を上回るクオリティだった。

 先にも触れたグラウンド中央付近を狙ったハイパント、ラインアウトの不安定さは、強豪国との対戦では致命傷になり兼ねない課題であることは、ここまでの秋の2試合で明らかだ。オーストラリア戦からの改善も、キックボールを競り合う場面などに見られたが、効果的と言える領域には達していなかった。

 ボールを積極的に動かしてきたアイルランドも、状況次第でミッドフィールドでのハイパントを使ってきたが、しっかりとチェイサーと呼ばれるパントを追い、落下してくるボールを競り合う選手が用意されていた。日本がボールを確保できたとしても、相手チェイサーが激しく重圧をかけ、思うようなテンポの攻撃に繋げられないシーンが何度も見られた。世界の強豪が、着実に力をつけてきた日本に対して、周到な分析、対策をしてきていることは明らかだ。

 もちろん、オーストラリア戦から2週間で問題点がすべて解消できるわけではないし、アイルランド戦での課題も同様だ。しかし、会見やコメントからは、日本代表メンバーたちが自分たちの敗因を冷静に理解していることも間違いない。

「アイルランドの勢いを止めることができなかった」(ピーター・ラブスカフニ/クボタ)

「ハイパントキックの場面で、もっとプレッシャーをかけてボールを取り返すことができればいい試合になったと思う、ここを修正していきたい」(フィフィタ)

「日本代表はスピードと勢いが大事だと思う。今日はそれがほぼなかった」(田村)

 最終ターゲットは、あくまでも2023年だ。今秋の2試合で露呈されたものが、スコットランドとのヨーロッパ遠征最終戦(20日、エディンバラ)までにどこまで修正され、来季の代表戦でさらに効果のあるプレーに改善できるのか。そして日々進化を続ける最先端のラグビーに、どこまでキャッチアップしていけるのかを見守りたい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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