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ラグビー日本代表、5-60完敗の真相 アイルランドで“ダブリンの屈辱”はなぜ起きたか

パス回数はアイルランドの半数程度だった日本代表【写真:(C)JRFU】
パス回数はアイルランドの半数程度だった日本代表【写真:(C)JRFU】

パス回数はアイルランド「215」に対し日本はわずか「118」

 日本側の問題も多分にあった。再び松島のコメントだ。日本が得意の連続攻撃をできなかったことについて「ちょっとみんな(立ち位置が)浅いというのもあったが、外へボールを持って行かずに、すぐ相手に当たってしまい、そこに絡まれてターンオーバーされるのが結構あった。相手のリアクションは速かったが、(空いている)スペースにボールを運ぶこと(戦術)は変わっていないので、個人の判断で突っ込んだり、外からしっかり(指示の)声が伝わってないところもあったと思う」と語っている。2019年W杯で見せた、精密機械のようにメンバー全員が機能し合い、個人技で勝る強豪をなぎ倒してきたラグビーが十分にできていないのは明らかだ。その背景にあるのは、コロナによる強化時間の問題か、それともほぼ非公開を貫く練習なのだろうか。

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 防御についても、松島のコメントがチームの状況を適切に物語っている。

「キックオフからラインブレークされる回数が多かった。ディフェンスの幅だったり、FWがほとんどディフェンスで機能していない状態が多かった。1回やられたら次(の防御)をどうしようという修正が上手くできなかった」

 アイルランドが迷いなく、大きくボールを動かしてきた理由も、この指摘が物語っている。一気に大きくボールを動かすことで、日本代表FWの防御が届かない手薄なエリアでコンタクトすることを意図していたのだろう。フィジカル面では強さがないBK選手との接点なら確実に優位に立てるというアイルランドの策略に、日本の防御が対応できなかったという印象だ。

 試合データにも興味深い数値がある。通常の代表戦では、パス回数は1試合で1チーム100~200回程度。つまり200近い数字は快勝とも判断できるが、この日のアイルランドのパスは215回にも上った。ちなみに日本代表は118回と半数程度のパスしかしていない。7月の対戦では日本は170回のパスを見せ、アイルランドは勝ったにもかかわらず135回。パス回数からも、日本とアイルランドの変化を読み取ることができる。

 敵陣22メートルラインを突破した回数も、アイルランドの16に対して、日本は前後半1回ずつ。選手がボールを持って走った距離も、勝者の581メートルに対して日本は235メートルに終わっている。

 アイルランドが、日本戦で見せたラグビーが意味するものは何か。日本代表が試合前から“公言”してきたキックの逆を突く奇襲と考えることもできる。だが、次週の相手がオールブラックス(ニュージーランド)であることを考えれば、トップレベルのラグビーで、全く自分たちの目指すものではない戦術をビッグマッチ直前に導入することは現実的ではない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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