[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

トップリーグ展望【後編】タレント軍団・神戸製鋼、パナソニックが激突…ホワイトカンファレンス

昨年までの下位グループチームも虎視眈々

 上位争いの行方を中心に主要チームを見てきたが、昨季までは下位グループに置かれていたチームも着実にステップアップを続けている。レッドカンファレンスのホンダヒートは、強豪の足元を掬う可能性と同時に、そのラグビースタイルにも注目したい。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 2017年シーズンまでは10位台と2部に相当するトップチャレンジリーグ降格に甘んじてきたホンダだが、SHでニュージーランド代表経験もあるダニー・リーHCが2018-19年シーズンに就任すると、同シーズン9位と初めてTLでトップ10入りを果たした。翌19-20年シーズンは2勝4敗の10位でリーグ中止を迎えたが、敗れたNTTコム、クボタ、東芝、トヨタ自動車戦のうちトヨタ戦以外の3試合は1桁得失点差の接戦を演じ、総得失点差(マイナス7点)ではリーグ7番手につけた。

 日本代表でも活躍するWTBレメキ・ロマノ・ラヴァ、W杯日本大会で206センチの長身を武器に南アフリカ代表のW杯優勝にも貢献したLOのRGスナイマン、指令塔のSOベイデン・カーといった中心選手の流出は大きなマイナス材料だが、チームは個人技よりも組織としていかに機能するかを目指している。生命線になるのは、FL小林亮太主将のプレーが象徴する地道に走り続け、防御ラインを押し上げ、ボールを動かし続けるひたむきさと、不要な密集参加を捨てて次の防御に備えるクレバーさだ。

 上位チームのように大学強豪のスター選手や海外レジェンドを大量に集めるのは難しいが、いまや日本代表不動の背番号3に成長する具智元、同じく右PRで、身長190センチ、体重116キロの巨漢でボールキャリーでも威力を見せるマティウス・バッソンらが揃うスクラムを起点に、果敢なアタックで上位に挑む。スナイマンに代わり加入した南アフリカ代表Vメンバー、LOフランコ・モスタートについて、リーHCは「経験値が高く、スナイマン以上の水準にある」と太鼓判。スナイマンより小さいとはいえ、身長は200センチ。高さに加えてフィールドプレーでも激しさと運動量を兼ね備えている。W杯で見せたスタンダードを発揮出来れば、チームも昨季以上の成績が見えてくる。

 W杯クラスの選手が少ないBKだが、身長171センチ、体重82キロと小兵ながらボディーバランスの高さを生かした当たり負けしないラン、防御の間隙を突くアタックセンスが光るWTB/CTB尾又寛汰、同じ明大出身でトップスピードに入ればリーグ屈指の走りを見せる大型WTB/FB渡部寛太の“ダブル・カンタ”らの活躍も打倒上位には欠かせない。

 個々の選手でも、個性と魅力を秘めた注目の逸材は少なくない。

 W杯日本大会で活躍したSH田中史朗(キヤノン)、流大(サントリー)、出場機会はなかったが茂野海人(トヨタ自動車)の座を狙う存在と注目したいのがパナソニックで4シーズン目の小山大輝だ。球さばきの巧みさ、密集サイドを突く瞬発力と攻撃面で高い能力を発揮する。チーム内のセレクションでは、18年シーズンまで君臨した田中、常にW杯候補に挙げられる内田啓介の代表勢が優先され、出場機会に恵まれなかったが、桜のジャージーに袖を通すためのポテンシャルは十分にある。後は高いレベルの実戦での経験値を高めることが不可欠。内田らとのチーム内のポジション争いを勝ち抜き、TLでの出場時間を伸ばすことが代表入りへの第一歩になる。

 同じSHでは、東芝のジャック・ストラトンも面白い存在だ。昨季の6試合中5試合はSO、1試合だけSHで先発したが、今季はチームリストでもSHにその名前が記されている。SHでの持久力やFWを動かすインサイドワークなどで未知数な要素はあるが、日本選手にはないグリップと手首の強さが最大の武器。スクラムや密集からパスを出す時も、テークバックせずに手首だけでボールを捌けるために、ボールに触れてからパスアウトするまで、リーグでもトップクラスの素早さだ。SHでは、外国人枠の影響で出場チャンスに恵まれない可能性はあるが、リザーブなら両ポジションで使えるメリットも持つ。出場した時には、その光速球捌きにご注目を。

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集