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ラグビー選手・川西智治が難病を告白 人知れず10年続ける「潰瘍性大腸炎」との闘い

突如襲う急激な腹痛と便意、移動中に紙オムツをはいたことも

 ラグビーで順調に結果が出始めた3年目。ここからが勝負、というところで、再び血便が出るようになりました。今回は腹痛の回数も排便の回数も増え、自分でもいつ便意に襲われるか分からず。情けない話ですが、トイレに間に合わなかったこともあります。

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 さすがにおかしいと思って病院へ行くと、以前よりも炎症が悪化していて、入院か副腎皮質ステロイド薬での治療を勧められました。でも、入院するとラグビーはできないし、できれば副腎皮質ステロイド薬も避けたい。そこで、血球成分除去治療を行うことにしました。

 人工透析のような治療で、血液の中から異常に活性化した白血球を取り除き、再び体に戻す方法です。週2回×5週間の全10回で、1回につき2時間ほどを要します。僕の場合、8回目から効果が出始めたのですが、血便と便意との闘いは続きます。同時に、ラグビーではようやくレギュラーとして試合に出られるようになり、掴んだチャンスを逃さないように必死でプレーする日々。ただ、治療の効果は少なく、病気は進行していきました。

 トップリーグの公式戦は、ホーム・アウェーともに試合前日に会場近くのホテルに移動し、決戦に備えます。チーム全員でバスや新幹線、飛行機を使って移動しますが、この移動中に突然、便意がやってくることもあります。でも、チームに迷惑を掛けたくないし、何よりもチームメートに恥ずかしい姿は見せたくない。移動前は食事を控えるなど努力もしましたが、急な便意が怖くて紙オムツをはいていたこともあります。バス移動の時に一度、後ろに座った選手に紙オムツが見えてしまい、大笑いされました。ふざけてごまかしましたが、心の中は恥ずかしくて情けない気持ちでいっぱいでした。

 ご存じの通り、ラグビーは激しいスポーツです。適切な栄養を摂り、強靱な体を作らなければなりません。でも、病気で十分な栄養摂取ができなかった僕は、体重と筋肉が減って怪我が増える一方。せっかくチャンスを掴んだシーズンだったにも関わらず、最後は左足首を脱臼骨折し、手術で幕を閉じました。

 絶対にパワーアップして復帰し、日本代表にも選ばれるくらい活躍しよう。そんな強い気持ちでリハビリを続けること5か月。病気の状態も落ち着き、体もビックリするくらい大きく仕上がりました。2か月あまりの松葉杖生活を終え、ようやくジョギングを始めたその夜、走れるうれしさを吹き飛ばす悪夢がやってきました。激痛を伴う下痢です。

 トイレと寝室を何度も往復し、ついには便座に腰掛けたまま朝まで過ごしたほどです。全身が疲労しきって、食事は喉を通らず。練習をしようとグラウンドに行ったものの、僕の顔色を見たトレーナーに帰宅するよう言われました。翌日も症状が変わらず、病院へ行くと緊急入院を命ぜられました。

 入院中は血球成分除去治療に加え、副腎皮質ステロイド薬を投与され、免疫抑制剤も処方されました。この病気は血液中の白血球が異常に増えるため、抑制する必要があります。ただ、白血球は体内の免疫力を司る細胞でもあるので、抑制すると風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスにも感染しやすくなるリスクがあります。現在も服用し続けていますが、普段から入念な予防・対策が必要です。

 そして最も効果がある治療は、絶食です。ただ、僕にとっては最も過酷。なぜなら、ラグビー選手にとっては自分の体が武器であり、命を守る防具でもあるので、適切な食事を摂って丈夫な体を維持することは欠かせないからです。しかも、僕はフッカーというポジションで、最前列のど真ん中でスクラムを組むため、100キロ近い体重をキープしなければなりません。それまで作った体が、絶食で崩れていくことは本当に辛い経験でした。

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