[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

明大ラグビー復活日本一の真実 改革・再建5年、「緩くなった」と言われ…エリート集団はなぜ変わった

「ただ喋ることが目的じゃない」 求めたコミュニケーションの“本質”

 その中で、社会人チームとの一番大きなギャップも感じていたのが、先に触れたコミュニケーション能力だった。

「選手の自主性、コミュニケーションの質ですね。優勝した最終シーズンも、いろいろなところ(報道)で選手ミーティングがフィーチャーされていましたが、確かにこの年はミーティングのレベルが高かったと思います。けれど、部全体だと、発言や練習でのコミュニケーションの取り方というのは、学生というのはまだ乏しいんです。ダメなわけじゃないが発展途上だと思いました」

 国内最上位リーグのチームを指揮してきたコーチが、最大の差としてフィジカルやスキル以上にコミュニケーションを挙げたことが、いまのラグビーで何が重要なのかを示唆している。

「だから学生たちにはコミュニケーションを取れと言うけれど、結局サイン(プレー)のコールだけずっと連呼して大声出しているのがコミュニケーションだと思っている子もいるんです。それ以外には何を話したらいいか分からない。何を話すべきなのか、コミュニケーションの本質は何なのかが分からない。要は、いいプレーをするために仲間に伝えたほうが自分が助かる。そのためのコミュニケーションじゃないですか。ただ喋ることが目的じゃなくて、このスペースにボールを運ぶためにどうしたらいいかを伝える手段のはずですけれど、そう考えてプレーしていた選手は大学では少ないという実感でしたね。それが今年のチームは、比較的しっかりと手段としてのコミュニケーションを取れる選手が多かったんです」

 監督としても選手のコミュニケーション力強化へ工夫をしてきた。その一つの例が“わちゃわちゃタイム”だった。

「ミーティングでは一方的に喋るんじゃなくて、よくあるやり方ですが、20秒時間あげるからこれについて考えてくれとかね。僕はよく“わちゃわちゃする”という言葉を使いましたが、部員同士がわちゃわちゃする時間を多くして、黙って話を聞いているだけのミーティングを減らしたんです」

 なるべく選手をリラックスした環境でミーティングを行ってきた神鳥監督だが、それも強い組織になるためには、その中で自主的に意見を言える、行動出来ることの重要性を感じていたからだ。

「選手たちは高校の監督、先生からたくさんのことを教えてもらって明治に集まってきた。でも、その教えを自分一人で自然に出来るかを、ここで学んでいくんだという話はしてきました。発言しづらい空気の中でも、チームのためにプラスなことは、自信を持って、自主的に発言出来るような選手が増えていかないとダメだとかね。選手の本音では、面倒くさいオッサンだったと思いますけれど、そんなことも問いかけながら結構話しました。敢えて言葉に出していたんです。優勝して昨シーズンの選手の中でのコミュニケーションの進化もクローズアップされましたが、実は回数としてはその前から続けてきたことで、その質が上がっただけなんです」

 5シーズンという、大学教員以外の指導者では長期の任期の中で、高いコミュニケーション能力をみせた選手も挙げてくれた。

「(伊藤)龍之介(新4年生、SO)なんかは最たるものでしたね。練習中のプレーを見ても本当にトップレベルだと思いますし、指示する内容も細かい。仲間に、もうちょっとこっちへとか、もう少し向こうに立ってくれ、もっと深くとか。本質的なコミュニケーションがゲーム中でも取れていた。卒業生の中でも秋濱(悠太、24年度卒、現BR東京、CTB)もコミュニケーションが取れる選手でした。サイズも目立たないし、彼に言うといつも怒るけれど足もすごくは速くない。それでもどうしていいプレーを沢山するかというと、練習中に見ていたんですけれど、ずっと喋っているんですね。そしてその内容が、とにかく具体的なんです」

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
funroots
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集