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パワハラを起こす「7つの習慣」とは 8年前に体罰で辞任、過ち語る高校ラグビー元監督の願い

7つの習慣の中で最も強調したい「傾聴」の大切さ

「パワハラをしてしまった指導者たちは、生徒に24時間費やしているにもかかわらず、最後はそこで訴えられたり、最近では逮捕されています。これって指導者の熱い思いは、在り方としては本当に生徒のため、チームのために本当に勝たせたいということから来ているのに、やはりそのやり方、声のかけ方で、お互いが不幸になってしまっている。この事実は変えないといけない。

 私がしくじったことと同じような過ちを、他の人には経験してほしくない。(流経大柏高ラグビー部を)ゼロから始めて30年間、家庭も顧みず情熱を注いでいたすべてを失った時に、私は生きる目的を失いました。こんな(見た目の)雰囲気ですけど、本当にうつ病になるくらい落ち込みました。外に出ることが怖かった。だけど今思うと、私にとってはいい経験でした。だからこの情報を、こういう場で皆さんに提供したいなと思っています」

 7つの習慣の中でも、松井さんが強調したのは「傾聴」の大切さだ。もちろん“話を聞く”ことだが、そこには相手の考えを理解し、認めるという姿勢が求められる。セミナーでは、監督辞任後に務める流通経済大ラグビー部アドバイザーとしての実践を紹介している。

「大学では、対選手というよりは指導者の指導をメーンにやっています。コーチたちとは、選手とのミーティングをどう進めていくかという話をします。選手自身がなぜ今ラグビーをしているのか、なんのためにラグビーをしているのか、将来どうなりたいのか、どんなプレーヤーになりたいのか、そしてそのためにはどういう課題があるのか、理想と現実の間の課題を抽出させて、その問題を一つひとつクリアにしていくためには、どんな行動をしていったらいいのかというような形で、選手に質問させていきます。誰のために、なんのために、今何をするべきなのかという質問を多くするようにとアドバイスしています」

 監督時代の松井さんは「質問ではなく、こうしろ、ああしろと話していました」という。だが質問をすることで、つまり選手たちの話を聴くことで、個々の選手たちやチームが考えていることが分かるようになるという。

「その子が抱えているものが、いろいろ見えてくる。“ああ、なるほどな”という気づきを与えてもらえる。そういうことを繰り返すのは、めちゃくちゃ時間かかりますし、最初はイライラしますよ。ああしろ、こうしろのほうが楽ですから。だけど、私たちが変わるためには、忍耐力を身につけないといけない。時間を費やさないと忍耐力はつかないですよね。だから、その繰り返しをしていくことは大事だと思います。傾聴すること、質問すること、そして彼らが、チームが何を考えているかと聞いた時に、現状から理想へ向けての課題が分かります。選手との間にすれ違いがなくなるはずです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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