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週6時間練習だけでは「絶対勝てない」 異色のラグビー監督、時短部活で花園挑戦の1年

就任1年目のゴロー先生の中にあった迷い

 赴任が決まる前にチームを見学した時、すでに一つひとつの練習メニューに現実味のないもの、着手できるものがたくさんあると感じていた。その一方で、1年間ですべてを変えることは難しかった。そこには初めて花園出場を現実的な目標に据えるチームの指導者になったことによる迷い、躊躇もあったという。

「3年生は、本当に切実に勝ちたいと思っていた学年でした。彼らは、自分たちが信じてここまでやってきたこと、先輩たちが花園に出場した時のプロセスを貫きたかったんです。3年生の気持ちを損なうようなコーチングはしたくなかったし、過去2年間に肌で感じた成功へのアプローチを私が知らないだけで、彼らのほうが実は正解率が高いのかもしれないという思いもありました。でも、結果的に決勝で負けてしまったのは、やはり私自身がチームの中で戦っていなかったからかなと思います」

 今の聖光の選手たちを見て、ゴロー先生が強く感じたのは、BK(バックス)にスピードを持った選手が揃っていることだった。だが、上級生が目指したのは、キックとディフェンスとモールで勝負する従来のラグビースタイル。時短の影響もあり、強化に時間がかかるポテンシャルやフィットネスの勝負では、東海大静岡翔洋のような相手には太刀打ちできないという考え方がチームに定着していたのだ。

 ゴロー先生の心中には「こんなにいいフィニッシャーたちがいるのに、それを使わないのか」という驚きもあったが、部員たちが目指すスタイルを極力尊重してチーム強化を続けてきた。その結末は、昨年の11月13日に行われた県大会決勝で10点差の苦杯という幕切れに終わった。

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(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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