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週6時間練習だけでは「絶対勝てない」 異色のラグビー監督、時短部活で花園挑戦の1年

部員数が減少、選手獲得へ必要な広報活動

 同時に痛感したのは、県大会を勝ち、花園で勝つために必要な選手、選手層をどう確保、獲得していくかという問題だった。

「このステージになると相手も相手なので、たまたま聖光に来た部員で花園ベストいくつ、シード校と勝負しますというのは現実的ではないですね。花園での勝利を考えると、ウチに興味がある生徒への広報活動をしていく必要があると感じています」

 昨季の部員数は35人。3年生が抜け、新入生がいない今年2月の時点では、21人になった。部員数は確実に減少している。静岡聖光学院にはラグビーの有望選手を対象とした推薦や特待生制度はなく、中高一貫教育も重視するため、高校から入学する間口も限られている。このような状況の中で、小学生、中学生に声をかけることで、なんとか部員確保に繋げようという取り組みも行われている。

「まず(静岡聖光学院を)知ってもらう、入り口があるということを紹介することです。対象になるのは静岡と、県境を接する神奈川、愛知を中心とした地域くらいですね。そこの小中のラグビースクールのコーチです。個別には声をかけられないので、私たちにできることは、こういう選択肢もあるよとスクールの中で(情報を)載せてもらうところまでですね。強豪校に行って厳しいポジション争いをするなら、ここならチャンスも大きいし、学校の授業、カリキュラムも面白い。こんなスタンスでラグビーをしたい子がいれば、ぜひ志願してほしいという気持ちです」

 善し悪しの議論はあるが、ラグビースクールの保護者たちは、スクールやコーチに子供の進路までを期待しているのが現状だ。そのコーチたちに静岡聖光学院の取り組みや活動を知ってもらうことで、子供たちへの選択肢の1つにしてほしいという思いだ。

「時短」とともに、このチームが注目されるのが「自主性」だが、そこにも現実とのギャップがあるという。

「実際にチームの活動を見て感じたのは、その(自主性の)中身が形骸化していたことです。多くの練習メニューが、目的を失ったものや慣習の反復になっていた。例えば実際の試合では、ほとんどラックになるところを、練習では立ったままポイントを作っていたり、ブレークダウンでも実際にはそんな入り方、体の使い方をしていない昔ながらの動きを、練習ではしていましたね。高校ラグビーでも戦術は変わり、ブレークダウンも変わるなかで、『これは誰々さんが教えてくれたことだから』と何年も前からやってきたプレーを変えずにやっていた。今は昔の先輩が作った教科書を見直して、なんのためにやっているのかをもう一度考えるようにしています」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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