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新時代の“部活の在り方”とは? 異色の高校ラグビー監督、楽しさとは異なる価値の追求

花園出場7度の実績を持つ静岡聖光学院高校ラグビー部での、1年目の挑戦を終えた“ゴロー先生”こと松山吾朗監督。県大会決勝で敗れ花園行きは逃したが、これまで全国レベルのチームを指導した経験がなく、神奈川県教員から昨春に同校教諭(監督)に転じた指導者は、新たな時代の部活についてどのように考えているのか。神奈川県教員時代には「部活のクラブ化」に挑戦し、昨年4月からは全国大会を目指すラグビー部を指導。いわゆる勝利至上主義とは異なる部活に取り組んできた経験も踏まえて、強豪校を率いるなかで見えた新たなビジョンを語ってくれた。(取材・文=吉田 宏)

松山吾朗監督が就任して2年目のシーズンに挑む静岡聖光学院高校ラグビー部【写真提供:静岡聖光学院ラグビー部】
松山吾朗監督が就任して2年目のシーズンに挑む静岡聖光学院高校ラグビー部【写真提供:静岡聖光学院ラグビー部】

静岡聖光学院ラグビー部「ゴロー先生の挑戦」中編、価値観が分散する時代の部活

 花園出場7度の実績を持つ静岡聖光学院高校ラグビー部での、1年目の挑戦を終えた“ゴロー先生”こと松山吾朗監督。県大会決勝で敗れ花園行きは逃したが、これまで全国レベルのチームを指導した経験がなく、神奈川県教員から昨春に同校教諭(監督)に転じた指導者は、新たな時代の部活についてどのように考えているのか。神奈川県教員時代には「部活のクラブ化」に挑戦し、昨年4月からは全国大会を目指すラグビー部を指導。いわゆる勝利至上主義とは異なる部活に取り組んできた経験も踏まえて、強豪校を率いるなかで見えた新たなビジョンを語ってくれた。(取材・文=吉田 宏)

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 前編でも紹介したように、ゴロー先生が神奈川県教員時代からこだわるのが部活を楽しむことだ。

「ラグビーを楽しんでもらいたい。子供たちにはラグビーが好きで努力してほしくて、楽しいから勝ちたいと思ってラグビーの工夫をいかに能動的にやるかという環境を作りたいですね」

 早稲田大学ラグビー部でSH(スクラムハーフ)として活躍したゴロー先生だが、卒業後は警視庁に進んだ。だが、子供を補導するよりも補導されない子供を育てたいと教員資格を取得。そんな経歴のなかで、部活と教育には独自の見解を持つ。

「私自身は、ラグビーは教育の手段というテイストは好きじゃないというか、あまり振りかざしたくないとずっと思っています。ラグビーはラグビーで、楽しくて、選手みんなが全力で勝利を求めて、そこにラグビー特有の文化的な良さも加わる。ただ、そのプロセス、ラグビーの構造自体が、教育的にかなりいいものを含んでいるから人が育つし、リーダーシップも育つ。そういうものを獲得した選手は人間的に成長するし、獲得できない選手もいるというくらいでいい。だから選手には、ラグビーを楽しんで、ラグビー自体に専念してほしいと考えています」

 紳士のスポーツなどと呼ばれるラグビーだが、この競技がイングランドで誕生し広まった背景には17世紀に始まった産業革命がある。財を成した起業家が、子息をラグビー校のようなパブリックスクールに通わせ、それがオックスフォード大、ケンブリッジ大などに伝播していった。貴族階級ではなく、商売や事業で豊かになった上級市民層の事業家の子供たちがラグビーを楽しみ、広める中心であり、事業の後継者としてのリーダーシップを身につけることも求められた。ルールやレフェリングを見ても、取り締まるのではなく、自分たちをいかにコントロールできるかが試されるのが特徴で、競技自体にリーダーになれるような人材の育成という要素が組み込まれているのもラグビーの特徴だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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