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45歳、上場企業から脱サラ 挑んだ「ラグビー界の超ニッチ」…30人が集まる“スクラム虎の穴”の正体

日本で他に類を見ないラグビースクールがある。2024年に開校した「REAL PROP ACADEMY(リアル・プロップ=PR・アカデミー)」は、PRの選手を対象に、スクラムだけに特化した教室だ。中高生中心ではあるが年齢を問わずスクラムを極めたい、これからPRに挑戦したいという、むくつけき男たちが集まる。代表を担うのはクボタスピアーズ船橋・東京ベイOBの伊藤邦行。このPR職人に、異色の“スクラム虎の穴”にかける思い、その取り組みを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

伊藤邦行氏が代表を務める、PR指導に特化した「REAL PROP ACADEMY」とは【写真:吉田宏】
伊藤邦行氏が代表を務める、PR指導に特化した「REAL PROP ACADEMY」とは【写真:吉田宏】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイOB伊藤邦行が手掛ける“プロップ専門教室”

 日本で他に類を見ないラグビースクールがある。2024年に開校した「REAL PROP ACADEMY(リアル・プロップ=PR・アカデミー)」は、PRの選手を対象に、スクラムだけに特化した教室だ。中高生中心ではあるが年齢を問わずスクラムを極めたい、これからPRに挑戦したいという、むくつけき男たちが集まる。代表を担うのはクボタスピアーズ船橋・東京ベイOBの伊藤邦行。このPR職人に、異色の“スクラム虎の穴”にかける思い、その取り組みを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 夕闇迫る埼玉・北与野に並ぶフットサルコート。サッカーアカデミーに集まるスリムな少年たちが駆け回る中に、一角だけ違ったシルエットが一つ、また一つと集まってくる。「すこし太目」の彼らのお目当ては、シュートでも華麗なパスでも、勿論トライでもない。

「はい! みんな棒のトレーニングから始めましょう」

 “校長”役でもある伊藤代表の掛け声を合図に、20人近い生徒たちが円陣を解く。各々が手にした竹刀サイズの木の棒を使いながら、四つん這いになったスクラムの姿勢、スクワットと、黙々とドリルをこなしてゆく。全てがスクラムを組むための基本のメニューだ。やがて2人1組でのゴムベルトを使った姿勢のチェック、1対1の組み合いが3対3となり、最後は5人でのスクラムへ。PRと同じFW第一列でスクラムを組むHOの子供たちへは、スポットコーチとして参画するスピアーズOB杉本博昭らが、スマホでスローイングの動画を撮りながら手取り足取り指導をしている。80分の試合(高校生は概ね60分、中学は40分)の中で、わずか数分だけしかないFW8人の「押し合い」にプライドと意地を賭ける選手たちの“修行”は1時間半に及んだ。

「(ラグビー全般を教える)アカデミーは8年になります。PRアカデミーは、2年前の9月からです。僕も51歳ですが、50歳になる時に得意なものは何かなと考えたんです。パスが得意だったわけじゃないし、キックも上手くない。やはりスクラムだなと。それに、僕自身高校からラグビーを始めて引退するまで、じゃあ誰かにしっかりとスクラムについて教わったのかと考えると、そういう経験ってほとんどないんですね。だから、中高生くらいから基本を学んでいたら、きっと、もっともっと楽しかっただろうなと思ったんです」

 現役時代からの愛称は“ペコちゃん”。失礼ながらその風貌からはかけ離れた愛称だが、命名者は現役時代にチームメートだった外国人選手だという。移動中に偶然みかけた洋菓子店のマスコットから付けられたものが、敵味方関係なく今も呼ばれている。現役を引退して14年。最初はクボタでの社業に専念したが、楕円球への情熱は尽きなかった。

「本当はコーチとしてチームに残りたかったが、その枠はなかった。なので、アカデミーでやろうと決めたんです。会社を辞めたのは45歳の時でした」

 国内のトップレベルのチームには外国人指導者が大挙流入する中で、コーチのポストもHCが呼んできた外国人が占めていた。上場企業を退社するかなり思い切った選択ではあったが、大きな組織の中でオフィスワークを続けるのも性に合っていなかったこともあり、再びラグビーのフィールドに戻って来た。クボタ社員という安定した仕事を辞めてでもアカデミー経営を選んだのは、チームメートの経験も後押しした。

「クボタにブレンデン・ジョーンズ(FL)というオーストラリア出身の選手がいたんですが、休暇に彼の家に遊びに行ったらラグビーのアカデミーをやっていた。やって行けるのかと思ったが、本人は大丈夫だと言う。そこで、自分も日本でやってみようと帰国して直ぐに辞表を書きました。引退した後も、どこかのタイミングでラグビーでメシを食っていきたいという気持ちがあったんですね」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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