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勝利至上主義の高校ラグビーに一石 監督の指示「禁止」、KCリーグ創設の狙いとは

平塚工科高校ラグビー部に外部の選手が加わった、湘南アルタイルズのメンバー【写真提供:松山吾朗】
平塚工科高校ラグビー部に外部の選手が加わった、湘南アルタイルズのメンバー【写真提供:松山吾朗】

予想以上の賛同者を得られたKCリーグの魅力

 4月からの新年度では、昨年の参入チーム以外にも声をかけながら、新チームの活動が軌道に乗るゴールデンウイークからのリーグ再開を目指している。そして、クラブチームとしてのアルタイルズの活動も、コロナによる制約の中で一歩ずつだが前進し、ゴロー先生にも発見があるという。

「平日だと、クラブメンバーは時間的なこともあり、なかなか平塚のグラウンドに来られない。なので、コロナでの土日の活動の禁止期間が難しかった。この半年で半分くらいの時期がそんな状況でしたから、クラブメンバーの練習不足は課題です。メンバーは現在5人。花園常連校を中退したけれどラグビーは好きだから続けたいと、自分から電話で問い合わせてきて、八王子から通ってくる子もいます。クラブメンバーの様子を見ていると、通信制に在学する選手同士でお互いの授業について情報交換したり、想像していなかったことも起きています」

 誰でも参加できる高校クラブチームのことを聞きつけて、アルタイルズに参加したメンバーは、様々な背景を持って集まってきた。中学時代にいじめで不登校となり高校も退学して通信制に転学した子、インターナショナルスクール在学生、在学校が全国屈指の強豪チームで敷居が高すぎるとアルタイルズを選んだ子、平工ラグビー部を辞めたがクラブメンバーとしてプレーする在校生もいる。

 KCリーグに参加する多くのチームは、いわゆる合同チーム。1つの高校では人数不足で活動、試合ができない選手たちが、複数校合同でチームを作り、公式戦に出場してきた。そしてKCリーグに予想以上の賛同者があったのは、このリーグが「勝たなければいけない」という思想から解放されていたこと。そして参加した高校の指導者にも、できる限り多くの選手を試合に出してあげたいという切実な思いがあったからだろう。

 では、選手はこのようなクラブとの二刀流、そしていわゆる公式戦とは違うリーグを、どう受け止めているのだろうか。2022年シーズンのアルタイルズ主将、高橋爽くんに聞いてみた。

「最初に先生から話を聞いた時も、驚きとか違和感はあまりなくて、自分はウェルカムでした。クラブに来るような子は経験者が多いじゃないですか。自分たちのレベルアップにもなるし、お互いにいい関係になると思いました。実際に一緒にやってみた印象でも、部活の中にクラブメンバーが入ってきてくれるので、あまりクラブだからどうこうというのはないですね。

 KCリーグも、同じように平工にクラブメンバーが来て、一緒にやってくれる。KCリーグは、先生じゃなく自分たちで決めることが多いので、最初は馴れないこともあったけれど、選手は自主的にコミュニケーションするようになってきています。試合では、勝ちたいという気持ちはあっても、部の試合のようなプレッシャーがないので、ピリピリしてミスすることも少ない。結構チャレンジとかもできる。部活では出られない選手も試合ができるし、KCリーグ自体が目的なのでゲームを楽しんでいます」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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