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避けられない生理、胸をつぶして着けた下着 あるトランスジェンダーの大学院生の経験談

須永先生のゼミで性転換治療の研究を行う山田さん【写真:編集部】
須永先生のゼミで性転換治療の研究を行う山田さん【写真:編集部】

避けられない体の変化、初潮は「ついに始まってしまったか…」

須永「学校では『男女』に分かれて物事が行われることが多いと思います。小・中・高と、どのように状況を理解し、受け止め、対応してきたのでしょうか」

山田「小学生の頃は、あまり気にしていなかったように思います。当時は赤と黒のランドセルしかなかったのですが、元々、赤が好きだったこと、毎日、普通にズボンを着て過ごしていたせいかと思います。中学校では、女子生徒はジャンパースカートが制服でしたが、登校後は体操着に着替えてもよかったので、ほぼ体操着で生活していました。また、保健体育の授業に水泳がなかったこともあり、やはり違和感に悩む場面は少なかったと思います。

 高校時代はトランスジェンダーの同級生にとても助けられました。うちの高校は幸い、女子もスラックスの着用がOKだったので、その同級生から着られなくなったスラックスを譲ってもらい、3年間過ごしました。服装以外のことについてはあまり覚えていません。でも、今思えば、自分は男だけれど、どうすることもできない。このまま女として生きるしかないんだと、受け入れていたからだと感じます」

須永「着るものは何とかできても、体の変化は避けられません。生理が始まり、女性としてどんどん体が変化していくことに対し、どのように感じていましたか?」

山田「初潮を迎えたときは『ついに始まってしまったか……』という気持ちです。自分は女性としての体の変化を受け入れるしかないと考えていたので、ショックというよりはこれから毎月来ることが面倒くさいな、という感じでした。割り切って生活できるようになったのは、大学からです。『とりあえず生理の1週間は、耐えて過ごそう』という気持ちでしたね」

須永「生理だけでなく、胸もふくらんできますよね」

山田「それが中学生時代は柔道部だったので、減量と筋トレのおかげで胸が目立たなかったんです。逆三角形の体形でしたし、気にしていた記憶がありません。ただ、高校でサッカーを始めてから、体重がかなり増えたんですね。胸のふくらみも目立つようになって、やはり気になりました。大学時代もサッカー部でしたが、練習で走る量も増え、毎日筋トレもしていたおかげで、胸というよりも胸筋がかなりついて(笑)気にならなくなりました。

 それから、高校から胸をつぶして着られるアンダーシャツを着るようになりました。更衣室などで着替えているとき、友達から下着のことを指摘されることが一度もなかったこともよかったです。たかが下着と思われるかもしれませんが、自分の身に着けたいものをつけられることで、ありのままの自分でいられた。それが、精神的によかったと思います」

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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