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選手村で感じた「世界の不平等」 日本人五輪スイマーが引退後にユニセフで働く理由

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。今回は1996年アトランタ五輪に競泳で出場し、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんのキャリア。後編は引退後にユニセフで働く理由について。「世の中の不平等」を感じる経験は競技生活にあった。(文=長島 恭子)

引退後、ユニセフで働く理由について語った井本直歩子さん【写真:松橋晶子】
引退後、ユニセフで働く理由について語った井本直歩子さん【写真:松橋晶子】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#5

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。今回は1996年アトランタ五輪に競泳で出場し、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんのキャリア。後編は引退後にユニセフで働く理由について。「世の中の不平等」を感じる経験は競技生活にあった。(文=長島 恭子)

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 現役時代、競泳選手は10代がピークといわれたこともあり、井本直歩子さんは競技後の人生を早くから考えていた。シドニー五輪代表選考の落選後、競技を引退した井本さんには、もう次の目標があった。

 中学時代から海外遠征や国際大会で海外の選手と触れ合うようになり、自分と他国選手との環境の違いを目の当たりにするたびに、不平等が生まれる世界に疑問を抱いていた。

「例えば、日本の選手は揃いのウエアからジャージなどすべて支給され、物にあふれていた。一方、貧しい国の選手は、ゴーグルもジャージもなく、Tシャツ一枚とボロボロの水着でレースに現れる。選手村では無料で食事が提供されるため、アイスクリームや食事をたらふく食べる貧困国の選手を見かけることもありました。

 そのたびに恵まれた自分との差を痛感し、あぁ、なんて不平等な世の中なんだと感じていました」

 後にユニセフで働くきっかけになったのは、高校3年時に読んだ新聞記事だった。

 それは、94年広島のアジア大会に向け、トレーニングを積んでいた期間のこと。「朝練後、コーチ室に立ち寄り、新聞を読んでから朝食を食べるのが日課だった」井本さんは、いつも通り新聞を開くと、ルワンダ虐殺を報じる記事にくぎ付けとなった。

「ルワンダ虐殺は100日に渡り、ナタや素手で隣人を殺すような、本当にひどいものでした。自分がのほほんとトレーニングをしている今この瞬間も、地球の裏側では1日1万人が殺される惨事が現実に起こっている。そのギャップにショックを受けましした」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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