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ラグビー日本の4年間を「よくやった」で済ませてはいけない 「8強の壁」再突破へ検証すべきこと

日本代表の強化に暗い影を落としたサンウルブズの消滅

 イングランドの属するヨーロッパでは6か国対抗、アルゼンチンの南半球ではラグビー・チャンピオンシップと、強豪各国が毎シーズン、ハイレベルの試合を確保できているのに対して、19年大会でベスト8入りした国の中で日本だけが定期戦を組めていない。日本ラグビー協会(JRFU)でも、今年に入りニュージーランド、オーストラリア協会らと矢継ぎ早にパートナーシップを組むなど連携強化を図るが、毎年行われる大会への参入、開催はこれからのチャレンジだ。

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 過去のコラムで何度も書いてきたように、日本代表の強みは他国以上に組織で戦うことだ。強豪国のパワーや経験値、個人技に、組織で守り、組織で相手防御を崩す――。日本人の勤勉さ、ディテールにこだわる性分も生かしたこのスタイルで世界に立ち向かうには、その組織を機能させるための時間が重要になる。

 しかし、チーム力を上げながら挑んだアルゼンチン戦でも、9点差を追う後半25分の右展開から、相手防御のスペースを崩し切れなかったパスの判断と精度、あまりにも簡単にトライにつながる破綻を見せた組織防御と、まだまだ修正の余地を残しながらの敗戦となった。2020年の失われた1年を、十分には取り戻せずに挑んだW杯だったという印象が残る。

 もう1つのサンウルブズについてだが、こちらも指揮官は事あるごとに会見などの場で、その消滅を惜しんできた。常に淡々と話してはいたが、本音としては離脱を決めたJRFUの選択に腹立たしい思いもあったのではないだろうか。離脱前後の時期に日本協会のある首脳は、「トップリーグ(リーグワンの前身)に多くの海外トップ選手が集まっている。(スーパーラグビー離脱の)影響を補える」などと豪語していたが、あまりにも無責任な言い訳だと呆れた記憶がある。

 スーパーラグビーは興行ベースのプロリーグだが、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3か国が、代表選手の強化や、次世代の代表育成も視野に入れながら立ち上げ、最大限活用してきた。各国の代表クラスの選手が、現行レギュレーションでは12チームのリーグでシーズン14試合以上の真剣勝負を繰り広げる。代表選手、そして間接的にはチームのレベルの引き上げには願ってもない環境だ。

 このパンデミックの空白とサンウルブズの消滅については、日本代表というチームには一切の過失がない。自然現象と、リーグと各国協会の様々な思惑が絡み合い起きたことだが、JRFUという日本ラグビーの統括団体としてはできることがあったのではないだろうか。

 19年大会期間中から、日本代表がさらに上のステージに立つには代表クラスの選手層の厚みを増すことは誰もが認めていた。だが、パンデミックの発生も相まって、選手層どころか選手の強化すらままならない状況に陥ってしまった。もし、本当にあの空白の1年に何も手を打てなかったとしても、翌年以降に空白を埋め合わせ、失われた時間を取り戻す取り組みがあったのか。再開後の代表活動は時間、人員的にも制約があるのなら、若い候補選手や怪我などで調整が必要な代表クラスの選手に、別動隊として合宿、遠征などの“投資”をしていかなければ、当然のことながらリターンは期待できない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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