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ラグビー日本の4年間を「よくやった」で済ませてはいけない 「8強の壁」再突破へ検証すべきこと

コロナ禍の影響も…より多くのハイレベルな試合が必要

 試合後のWTB松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)の言葉が、日本代表の今をよく言い表している。

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「試合をすぐに振り返れないが、後半の疲れた時に(スコアを)取られた。相手は想定通りだったが、せっかくトライしたのに、すぐ後にトライを取られた部分とかがベスト8の壁というか……。(トライチャンスをパスミスで逃したケースは)どういうプレーをするにも精度の高いパスをしないといけない。そこの精度の部分だけです。(W杯まで)数か月は練習に力を注いだが、コロナ禍で試合ができなかったこともあった。W杯に挑戦するためには、より多くの(ハイレベルの)試合数が必要だと思う」

 筆者は大会前から書いてきたが、決勝トーナメント進出のために足りなかったものは明らかだったと思う。この日露呈したライン防御の破綻なども含めたチームの完成度であり、それは突き詰めれば強化時間と環境をどこまで確保できたかに繋がる。これは、日本代表というチームではなく、日本ラグビー協会(JRFU)を挙げて取り組むべき課題だろう。

 この大会を最後に退任するジョセフHCは、アルゼンチン戦後の会見で「この4年間には困難な時期もあったのでは」という質問に「あまり、そうは思わない」と否定したが、「ハイレベルのラグビーをできる時間がなかなか取れなかったが、ここは今後の日本代表でも難しい部分はあるだろう。常に強豪チームと試合をしていく必要がある」と語っている。ジョセフHCは、どんな環境でもチームを最善の状態に持っていくのがコーチの役割だという姿勢を貫いたが、本音では言いたいこともあったように思える。

 日本開催の2019年大会でアイルランド、スコットランドを破り、ベスト8進出と眩いばかりに輝いた日本代表だが、直後から試練が続いた。選手の進化、育成に大きく寄与した「サンウルブズ」が2020年シーズン限りでスーパーラグビーから離脱(解散)し、20年から猛威を振るった新型コロナウイルスによるパンデミックが起きた。

 まずパンデミックが日本代表に及ぼした影響だ。新型コロナウイルスの感染拡大は世界共通の脅威だったが、ラグビーでは各国の状況、対応で明暗が分かれた。日本は国内での感染爆発を抑えるために個人、組織への厳しい行動制限などを敷いてきた。そのためスポーツ界も感染拡大防止を最優先させたことで、行動、活動の厳しい制限下に置かれることになった。

 日本代表も20年春、秋の活動を中止。今回のW杯でも対戦したイングランド代表ら強豪国との試合を断念したが、海外強豪国は同年秋から代表戦を復活させ、パンデミックの影響を極力回避して強化を継続した。今回敗れたアルゼンチンも、コロナ感染の影響や2020年からスーパーラグビーを離脱するなど日本と似た境遇に置かれたが、20年秋からラグビー・チャンピオンシップで代表戦を再開して、ニュージーランドらとのハイレベルな試合を積んできた。コロナ後のフランス大会までのテストマッチはアルゼンチンの33試合に対して日本は17と半数あまり。その少ない試合数を補うために、今夏のオールブラックスXV(フィフティーン)などとのテストマッチ以外のゲームを組んでやり繰りしてきたのが現状だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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