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イングランド戦の合言葉は「殴られる前に殴る」 ラグビー日本に“奇跡”を呼ぶスクラム勝負の重要性

2019年W杯アイルランド戦のスクラムで奪った反則

 チリとの初戦では、パスをした後に背後からレイトタックルを受けて膝を痛めた。この日の練習は、公開された15分ほどの時間はプレーをせずに、チームの練習を見守り続けた。

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「今、膝の状態は結構、一日一日早く良くなっていて、自分的には試合に出られるつもりでいます。後はチームの判断でいくかなと思います」

 回復具合が危惧されるが、チームと一緒にピッチに立ち続けたのは控え目な具の出場志願のように見えた。

 では、長谷川ACが思い描き、具たち桜の戦士たちに落とし込んできた日本流のスクラムとはどんなものか。

 長谷川ACも指導者として初めて挑んだ2019年日本大会。世界では“弱小“と見られていたスクラムで、チームは奇跡を起こした。伝統的にスクラムへの拘りを持っていた優勝候補アイルランドとの一戦で、日本は勝負どころの組み合いで、相手から反則を奪い獲った。スクラムに拘る男たちにとって、「崩した」と判定されるのは「負け」と宣告されたようなもの。そんな屈辱をスクラム強国に味わわせ、ゲームでも“静岡の奇跡”と呼ばれる金星を掴んだ。

 海外選手ほどのサイズも体の厚みもない日本の選手が、パワーと重さがものを言うスクラムで互角以上に戦えたのは、組織力と低さを武器にしたからだ。低さは日本の伝統でもあるが、相手よりも低く組むことで、下から上へと押し上げるようなスクラムを組めるのがメリットになる。対戦相手が押し込んでくるパワーを真っ向から受けないのが特徴だ。

 その低さに加えて、FW8人全員が、より一体となって相手の最も弱い部分に全員のパワーを結集させる。巨大なダムが1ミリの穴から崩壊するようなイメージで押し込む。一体感を高めるために、8人が円陣で深呼吸をして息継ぎまで合わせるのは、今や日本のスクラムの常識だ。その詳細の突き詰め方が、長谷川ACの指導の下で他国に類を見ないほどのマニアックな領域に達している。8人で組むスクラムが、強固なバインドとコミュニケーションで、まるで1つの生き物のように一体化することが求められる。

 イングランドは昨秋にアルゼンチン、南アフリカらに敗れて、日本戦以外は未勝利。19年W杯では決勝戦まで勝ち上がったチームの低迷を受けて、同協会はエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC/現・オーストラリア代表HC)を解任。代わりに、エディー時代の日本代表でもACを務めたスティーブ・ボーズウィックに指揮が託されたが、今年の6か国対抗でも2勝3敗の4位。夏のW杯プレマッチでもフィジーに22-30と史上初めて敗れて、今大会に臨むことになった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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