那須川天心VSビクトル・サンティリャン

　ボクシングのWBC世界バンタム級（53.5キロ以下）1位・那須川天心（帝拳）が8日、東京・有明コロシアムで同級ノンタイトル10回戦に臨み、WBA同級6位のビクトル・サンティリャン（ドミニカ共和国）に3-0（99-91、99-91、100-90）で判定勝ちした。ボクシング転向7戦目。11月頃に見据える世界初挑戦に向けた前哨戦だった。戦績は26歳の那須川が7勝（2KO）、29歳のサンティリャンが14勝（5KO）2敗。

　井上尚弥、武居由樹らが現地で見守ったこの試合。「天心ー頑張れー！」という声援が四方から飛ぶ中、那須川は初回から積極的に手を出した。2回は軽快なステップで間合いを測りつつ、3回には接近戦を演じた。4回、激しい打ち合いに観客は熱狂。那須川は偶然のバッティングにより左目上をカットし、血で顔を赤くした。

　5回、開始早々に那須川の強烈なボディーが炸裂。6回には左アッパーがサンティリャンの顔面を捉えた。8回は互いにパンチの応酬。9回には連打を浴びる場面もあったが、左フックで反撃し、相手の右目上に内出血を負わせた。最終10回は両者一歩も引かない猛攻。終了のゴングが鳴ると健闘を称えるように抱き合った。

　那須川は「今日の試合は自分の課題である、詰め切る、あわよくば倒し切るというところを目標に練習してきたけど、やっぱり試合になるとうまくいかないということもあり。こういう苦戦するところを見せてしまったけど、サンティリャン選手、強い選手と戦えて、来てもらってうれしいです。ありがとうございます」とリングインタビューで語った。

　格闘技戦績47戦全勝（キックボクシングは42戦）でボクシングに転向。ボクシング5戦目の昨年10月に獲得したWBOアジアパシフィック（AP）バンタム級王座は返上した。世界ランクはWBC1位、WBA2位、WBO2位、IBF4位につけている。

　2月の前戦は元世界王者ジェイソン・モロニー（オーストラリア）に判定勝ち。今回は11月頃に見据える世界初挑戦に向け、「世界前哨戦」と銘打たれた。収穫について問われると「収穫は……まあ、課題がいっぱいありますね、ということですかね」と語った。

「こうもうまくいかないかあって。調子も良くて、これにすべてかけてやってきたけど、なかなか実を結ばないというか。でも、試合がこういう結果なので、これが自分の実力なんですよ。だから次、でっかいこと言おうとかまったく考えてなくて。本当に一歩一歩……後ろにちょっと下がったりもあると思うけど、一歩一歩、しっかり日々を生きていきたいと思います」と反省を込め、次戦を見据えた。

　最後はこの日も声援を送ってくれたファンに感謝。「ボクシングに来て、まだチャンピオンでもないのにこうやって応援してもらって、僕は幸せ者だと改めて思いました。入場の時も凄く歓声が聞こえて、こんなにもたくさんの人に応援されているんだと、感極まりました。これからも那須川天心という生き方を皆さんに見せていきたいし、何があっても僕は負けないので。どんな結果であれ、ボクシングと真摯に向き合って、たくさん強い選手がいるので、その選手たちをしっかり倒しに行きたいと思うので、これからも皆さん一緒に生きていきましょう」と呼びかけた。