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「職業・羽生結弦はますます成し遂げていく」「本当に陰陽師が好きなんだなと」【野村萬斎さん一問一答】

「職業・羽生結弦」について思うこと

――それから10年が経過する。

「あの頃はまだ僕と喋っているときに、彼の中にもちろん内包されているものなんだけど、まだ言語化されていなかった。それが多少私の言葉も含めて、今までの経験などでだんだんに殻が破れて、芽が出て、まさしく今、花開いているなと。そういう思いで素晴らしいなと。

 我々は年を取って老いていくわけですよね。次なる人々がいろんな意志を継いでくださるようなことで、とても嬉しく思いますね。僕自身も先人から能や狂言の知識であるとか、経験の中で僕が思っていた想いを、彼が受け取ってくれてこういう形の素晴らしいショー、かつ鎮魂という大きなテーマがあるということが素晴らしい。

 僕はつくづく思うんですけれども、『職業・羽生結弦さん』と私は最初にお呼びしたんですけれども、私が『職業・野村萬斎』と名乗ってるもんですから。僕自身も日本の文化、伝統文化を背負って生きているつもりです。彼の場合も彼なりの何か非常に大きなものを背負っている。そういう意味で公人、公の人というか、単なる個人の活動という枠を超えているところが素晴らしいなと思っていますね。彼の何かスケートにとどまらない意志、発想、行動力。そういうものが本当に凝縮された素晴らしいショーであったなと思います。ですから『職業・羽生結弦』はますます彼のできることを成し遂げていくんだろうなと思います。それは本当にありがたいことですね」

――以前羽生さんとの対談で、我々は「省略の文化」だと仰っていた。ボレロに省略の文化を当てはめる際に意識したことは。

「いろんな作り方をしていくうちに、どんどん削ぎ落としていったのは事実ですね。3.11を含めた祈りに変換していくという作業の中で、具体的に『実は子供を抱き上げて助けを求める』とか、『苦しい中にも花は咲くよ』とか『雨も降るよ』『夏も来るよ』と。そういうイメージで、具体的にしながらも抽象的な概念にしていって、最終的に人間の一生が垣間見られる。死からもう1回、次の生に。それが最後のジャンプに繋がるという意味合いを込めている。見ていると非常に抽象的に見えるかもしれませんけど、そういう思いで見ていただくと何か特別に見えてくるものもあると思うので、ぜひまたボレロも続けて共演できるといいですね」

(THE ANSWER編集部)


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