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レインウェアのファスナーが布に噛む…1200回試験、finetrack「エバーブレスフォトン」が8年ぶり刷新

雨を防ぐために必要だった布が、ファスナーに噛んでしまう――。finetrack「エバーブレスフォトン」は8年ぶりの刷新で新型止水ファスナーを採用し、フラップそのものを廃止。防水性を保ちながらレインウェア特有の小さなストレスをどう解消したのか紹介します。

10秒で分かるポイント

雨の侵入を防ぐため、レインウェアのファスナーには内側や外側を覆う「フラップ」が使われてきました。ただ、その布がファスナーに噛み込んだり、生地が重なってもたついたりすることも。finetrack「エバーブレスフォトン」は新型止水ファスナーを採用し、フラップそのものをなくす方向からこの不満を解決しました。

  • ・YKKと開発した新型止水ファスナー「AquaGuard Tightened」を採用
  • ・フラップを廃止し、噛み込みやファスナー周辺のもたつきを軽減
  • ・1200回開閉後の降雨試験でも旧型と同等の止水性を確認

 雨の日の登山では、レインウェアのファスナーを何度も開け閉めすることがあります。

 暑くなれば前を開ける。雨脚が強くなれば閉める。休憩や行動の変化に合わせ、グローブを着けたまま操作することもあります。

 そんなときに起きる小さなストレスがあります。

 「ファスナーを上げようとしたら、横の布を噛んで動かなくなった」

 実はその布は、雨から身体を守るために設けられた「フラップ」。従来の止水ファスナーだけでは十分に止めきれない雨水の侵入を補うため、レインウェアでは当たり前のように使われてきました。

 つまり、雨を防ぐために必要な構造が、使い勝手を悪くする原因にもなっていたわけです。

 finetrackが2025年春、8年ぶり2回目のリニューアルを行った「エバーブレスフォトン」で着目したのは、そんなレインウェアの“当たり前”でした。

雨を防ぐための布が、ファスナーを邪魔していた

 従来の止水ファスナーは、名称の通り水の侵入を抑える構造になっています。

 ただしfinetrackによると、従来型の止水ファスナー自体には十分な耐水圧がなく、レインウェア全体として必要な防水性能を確保するには、ファスナーの裏側や表側にフラップを配置するのが一般的でした。

 しかし、この構造には弱点があります。

 ファスナーを急いで閉じようとすると、スライダーがフラップを噛み込むことがある。

 さらに、本体生地とフラップが重なるため、ファスナー周辺に厚みが生まれ、身体を動かしたときのもたつきにつながることもあります。

 雨を防ぐためには必要。

 でも、動きやすさや操作性には邪魔になる。

 エバーブレスフォトンのリニューアルでfinetrackが選んだのは、フラップの形を改善することではなく、フラップを必要としないファスナーを作ることでした。

レインウェアの“当たり前”そのものを変える
 フラップを噛みにくくするのではなく、フラップなしでも雨を止められるファスナーを作る。今回のリニューアルの核は、問題の原因になっていた構造そのものをなくしたことです。

エバーブレスフォトン

「フラップなしでも雨を止めたい」 YKKと新型ファスナーを開発

 finetrackは2018年ごろからYKKに対し、フラップがなくても十分な耐水圧を備える止水ファスナーを求めていました。

 2020年から本格的に開発が始まり、完成したのが「AquaGuard Tightened(アクアガード タイトゥンド)」です。

 ポイントは、左右のファスナーテープの閉じ方です。

 従来の止水ファスナーが接点を“線”のように密着させるのに対し、AquaGuard Tightenedでは、左右のテープが互いに押し合ってM字状に膨らむ構造を採用しました。

 テープ同士を“面”で密着させることで、水が入り込む隙間を減らします。

 発想のヒントになったのは、意外にも冷蔵庫でした。

 YKKの開発担当者が、冷蔵庫の扉にあるパッキンが内部を密閉している様子から着想。小さなファスナーの中で同様に密着させる構造を実現するため、テープの素材や厚み、硬さ、曲げる位置などを変えながら試作を重ねました。

AquaGuard Tightened

 左右のファスナーテープを押し合わせ、“面”で密着させる新型止水ファスナー。ファスナー単体の耐水性を高めることで、従来必要だったフラップをなくせるようにしました。

フラップをなくして、本当に雨は入らない? 1200回開閉して比較

 使い勝手が良くなっても、防水性が落ちてしまえばレインウェアとしては本末転倒です。

 そこでfinetrackは、新旧のエバーブレスフォトンを使って比較試験を行っています。

 新型と旧型、それぞれのファスナーを1200回開閉したうえで、降雨量40~60mm程度の水を8時間当て、内部への漏水量を測定しました。

 結果は、新型AquaGuard Tightenedを使用したエバーブレスフォトンが0.15g。

 フラップを備えた旧モデルは0.16gでした。

 finetrackはこの結果から、新型はフラップがなくても従来のフラップ付き構造と同等の止水性を備えているとしています。

比較 構造 8時間後の漏水量
新エバーブレスフォトン AquaGuard Tightened/フラップなし 0.15g
旧エバーブレスフォトン 従来型止水ファスナー/フラップあり 0.16g
「なくした」のは防水機能ではなく、補うための構造
 フラップを省いただけではありません。ファスナー自体の止水性を高めることで、従来フラップが担っていた役割をファスナー側へ移しています。

ファスナーが噛まないだけじゃない 生地の重なりもなくなった

 フラップをなくすメリットは、ファスナーの噛み込みを減らせることだけではありません。

 従来は本体生地とフラップが重なっていたため、ファスナー周辺にはどうしても厚みが生まれます。

 AquaGuard Tightenedを使えば、その追加生地が不要になります。

 これによって、ファスナー周辺のもたつきを抑え、よりすっきりしたシルエットにできました。

 登山では腕を上げたり、身体をひねったり、足を大きく踏み出したりします。

 小さな生地の重なりでも、長時間着続ければ違和感につながることがあります。

 「雨を防ぐために仕方ない」とされていた余分な構造を一つ減らす。

 新しいエバーブレスフォトンでは、それが着心地や動きやすさの改善にもつながっています。

エバーブレスフォトン

雨具は濡れるほど蒸れやすい 表だけでなく裏側にも撥水加工

 今回のリニューアルはファスナーだけではありません。

 エバーブレスフォトンがもう一つ重視しているのが、悪天候の中で長時間行動したときの蒸れです。

 レインウェアは外から雨を防げても、歩き続ければ身体から汗と水蒸気が発生します。

 さらに生地の表面に水膜ができると、内部の湿気を外へ逃がす透湿性能を発揮しにくくなります。

 エバーブレスでは表地と裏地の両面に耐久撥水加工を施し、水膜の発生を抑えることで、透湿性を長時間持続させる設計にしています。

 透湿性は10,000g/㎡・24hr。耐水圧は20,000mmです。

 ジャケットには、衣服内にこもった蒸れを逃がす「リンクベント」も備えています。

エバーブレス ファブリック

 finetrack独自の防水透湿素材。防水性だけでなく、長時間行動時の透湿性とストレッチ性を重視しています。表地と裏地の両面に耐久撥水加工を施し、濡れた環境でも透湿性能が低下しにくい設計です。

エバーブレスフォトン

伸びるレインウェアは傷みやすい? 生地も8年ぶり刷新で耐久性を強化

 身体の動きに合わせて伸びることは、登山用レインウェアの快適性につながります。

 その一方で、繰り返し生地を伸ばしたり、岩や装備に擦れたりすれば、防水透湿膜には負担がかかります。

 2025年モデルでは、本体生地の糸使いや組織も変更しました。

 従来から備えていたストレッチ性、長時間持続する透湿性、軽量コンパクト性を維持しながら、繰り返しの伸縮や摩擦、汗や皮脂汚れによるダメージへの耐久性を高めています。

 公式試験では、2万回のストレッチ試験、さらに3万回の摩擦試験を行った後も防水性を維持したとしています。

 単に新品の状態で水を防げるかではなく、長く使った後にも性能を維持できるかを重視した変更です。

8年ぶりの刷新は「長く使った後」まで見直した
 新型ファスナーで日々の操作ストレスを減らすだけでなく、生地そのものも繰り返しの伸縮や摩擦に強い設計へ。悪天候の中で長時間使い続けることを前提にしています。

エバーブレスフォトン

防水なのに身体の動きを邪魔しない 縦107%、横117%のストレッチ

 レインウェアを着ると、普段のウェアより身体が動かしにくく感じることがあります。

 生地そのものに防水性を持たせるため、一般的な衣類より硬さや突っ張りを感じやすいからです。

 エバーブレスフォトンでは、縦方向約107%、横方向約117%のストレッチ性を持つ生地を採用しています。

 さらに、袖や肩周辺のパターン、生地を配置する方向も工夫。

 裏地には柔らかなニット生地を使い、防水ウェア特有の硬さやゴワつきを抑えています。

 雨を止めるだけでなく、雨の中でも歩き続けられること。

 エバーブレスフォトンが長時間行動を意識している理由は、こうした部分にもあります。

エバーブレスフォトン
【Men’s】
エバーブレスフォトン
【Women’s】

エバーブレスフォトンの主なスペック

項目 ジャケット パンツ
耐水圧 20,000mm
透湿性 10,000g/㎡・24hr
重量 Men’s M:300g
Women’s M:280g
Men’s レギュラー丈:235g
Women’s レギュラー丈:220g
主な刷新点 AquaGuard Tightened採用、フラップ廃止、新生地 AquaGuard Tightened採用、新生地
主な機能 リンクベント、ヘルメット対応フード、大型フロントポケット、内ポケット、裾ドローコード ベンチレーション兼用サイドファスナー、ウエスト調節、裾ドローコード

レインウェアの不満を「仕方ない」で終わらせなかった

 レインウェアの一番重要な役割は、雨から身体を守ることです。

 だから多少ゴワつく。

 ファスナーにフラップが噛むことがある。

 生地が重なってもたつく。

 これまでは、防水性を確保するためなら仕方のないこととして受け入れられてきた部分でもあります。

 エバーブレスフォトンの2025年リニューアルでfinetrackが変えようとしたのは、まさにその「仕方ない」でした。

 フラップを噛みにくくするのではなく、フラップそのものを不要にする。

 そのためにYKKと新しい止水ファスナーを開発し、防水性を維持できることを繰り返しの開閉と降雨試験で確かめる。

 さらに本体生地も、長時間の雨や蒸れだけではなく、繰り返しの伸縮や摩擦まで想定して見直しました。

 「雨を防げればいい」から、「雨の中でもストレスなく動き続けられるか」へ。

 8年ぶりに生まれ変わったエバーブレスフォトンは、レインウェアでは当たり前だった小さな不満を、構造そのものから変えようとした一着です。

「エバーブレスフォトン」finetrack公式商品ページ
finetrack公式「生まれ変わったレインウエア——新しい『セオリー』への挑戦」

【写真提供:株式会社finetrack】

(THE ANSWER編集部)

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