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スポーツ栄養もジェンダーを考慮すべきか 英大学博士が紹介した2つの研究結果

2つの研究結果からウォールス博士の考察

 もう一つは持久的運動中の糖質摂取量についてです。アメリカスポーツ医学会のガイドラインでは、2.5時間以上の持久的運動中の糖質摂取の目安量は、最大で90g/時と言われています。

 そこで、年齢や体力、運動状況が類似した複数の男女を対象に120分間、自転車をこぐ実験を行い、運動中に摂取した糖質がどれぐらい利用されるかを調べたところ、男女に大きな差は見られないことが分かりました。ただし、女性の多くが消化器官症状を訴えていたため、さらに運動中に1時間当たり30g、60g、90gの糖質を摂取し、それぞれ同様の実験を行った結果、1時間に60gでも十分に糖質が利用でき、体への負担も抑えられることが分かったそうです。

 この2つの研究結果から、糖質に関しては、

○生理学的な観点から筋グリコーゲンの貯蔵量や運動中に利用できる糖質の量に男女差はない。

○むしろ、実践的かどうか(エネルギー収支や消化管の耐性)、あるいは個人差(運動量、運動時間)が、カーボローディングや運動中の糖質摂取に影響を及ぼすところが大きい。

 とし、糖質に関しては必ずしも性差によって必要量が変わるとは言えないことが分かった、と考察しています。

 女性アスリートの栄養についてはこれまで、「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗鬆症」という女性アスリートの三主徴が頻繁に取り上げられてきましたが、今回のような栄養素にフォーカスしたジェンダー研究について話を聞くのは、とても新鮮でした。

 近年、スポーツ栄養もトレーニング同様、「Personalized nutrition(個別栄養)」、つまり一人ひとりの体にあった食事計画、栄養補給計画が重要視される流れにあり、性差も要素の一つです。

 このような研究がますます進むことで、より女性の体、個々の体に合い、なおかつパフォーマンスの向上につながる食事計画が立てられるようになります。その際も机上の空論にならないよう、常に実践的な視点で物事をとらえることの重要性を、ウォールス博士が繰り返し強調していたのがとても印象的でした。

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(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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