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好展開も…なぜかスコアに繋がらない “連続大敗”ラグビー日本代表の今、司令塔が指摘した「問題は…」

エディーHCの目指すラグビーで見え始めた攻撃力を高める“萌芽”とは【写真:JRFU】
エディーHCの目指すラグビーで見え始めた攻撃力を高める“萌芽”とは【写真:JRFU】

課題は得点力も…見え始めた攻撃力を高める“萌芽”

 勿論、キャップ数に差があるから負けてもいいという理屈はラグビーにはない。オーストラリア戦からの秋のテストマッチ3試合の平均得点が10.7。トライ数1.3を嘆く声もあるようだが、では日本代表のパフォーマンスは果たして全く上がって来ていないのか。代表が「結果」を求められるチームである限り現状への批判が起こるのも然りだが、もう一方では、彼らが今どんなプロセスの中に立っているのかを見ていく必要があるだろう。何故なら、このチームが熟成途中だという現実は、ファンならおそらく中学生でも知っているからだ。

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 ダブリンでの戦いでは、少なくともコーチ、選手が転機と話した「後半12分」までを見れば、わずかとはいえチームの成長を感じられるプレーを見ることが出来た。とりわけ後半4分からの防御には息を飲まされた。キックボールを確保して仕掛けてきたアイルランド右PRを、FLベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)がハードタックルを食らわしボールをファンブルさせる。再度仕掛けてきた相手が左に大きく展開して、WTBが22mラインを突破してきたが、ぎりぎりで追いついたWTB石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)が、かろうじて手を掛けて減速させてトライを許さなかった。

 さらにアイルランドは攻撃を続けて、ゴール前でボールを展開したが、戻って来たガンターの頭から飛び込むタックルに再び相手がファンブル。アイルランドがなんとかボールを生かしたが、PR竹内柊平(東京サントリーサンゴリアス)、LOエピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)のダブルタックルでノックオンを奪っている。その1つ1つのプレーからは、彼らがどれほどのハードワークを進んで、献身的に、そして愚直に続けているかが滲む。

 勿論、そんなプレーは練習で培われてきたものだ。この一連の流れは、最終的に後半8分のアイルランドPRアンドリュー・ポーターのトライに繋がったが、トライ前のフェーズではNo8マキシファウルア(S東京ベイ)が猛烈なスピードで相手No8ケーラン・ドリス主将に襲い掛かりボールをファンブルさせ、そのボールを拾った選手にも連続してタックルを浴びせ掛けるなど、世界3位の相手に凄まじい防御を見せ続けた。結果だけを取り上げて文句をいうのは容易いが、この80分間の中で、選手たちがどんなエフォートをしたのか、何が世界3位に及ばないのかを客観的に、冷静に見ることも重要だ。

 防御に関しては、秋のツアー前に正式にアシスタントコーチ(AC)に就いたギャリー・ゴールドを中心に取り組んできたものが形を見せ始めている。先端のIT技術なども取り入れると聞くが、実際に今回の遠征でみせたディフェンスセッションでは、南アフリカでもおそらく当たり前のこととして取り組んでいたであろう、かなり“根性練習”のような激しい、フルコンタクトに近いメニューを選手に科していたのが印象的だった。以前は闇雲にラッシュアップしたディフェンスを見せていた日本だが、この秋のプレーを見るとコンタクトエリアでのファイトでのインパクトの強さにこだわり、2枚目、3枚目の選手の寄りの意識は、まだ断片的だといえ意識づけられている。

 課題の得点力の低さに目を向けると、攻撃力を高めるための“萌芽”は見えてきた。アイルランド戦の総スコアは1トライ、1PGと寂しい限りだったが、得点は両方とも日本のスピードに乗った攻撃に相手が我慢できずにオフサイドの反則を犯して挙げたものだった。日本のテンポで攻撃を継続出来れば、相手は反則を犯すか、徐々に防御を崩していく。だが、日本側が、アイルランド戦でもラインアタックで本来パスを取るべきじゃない選手がキャッチ(ミス)してしまったり、多くの連携ミス(ハンドリングエラー)、反則を犯し、自分たちから相手を楽にさせているようなプレーがあまりにも目につくのが現時点でのこのチームの姿だろう。

 まだこのレベルなのかという驚きも批判もあるかも知れないが、これが現実だ。経験値はまだまだ発展途上と認めざるを得ないが、その中でも先に紹介したような、息を呑むディフェンスも見え始めている。試合後のミックスゾーンで悔しい思いを語ってくれたSO李だが、話を聞くと実際にはかなりポジティブな要素も掴んでいることが分かる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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