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大学ラグビー関東王者が歌舞伎町で朝からゴミ拾い 異色の活動のウラに…セオリーに囚われぬ大東大黄金期復活への道

“格差”に対する酒井監督の思い「悔しいですけれど、努力次第」

 大学チームの指導陣は原則的には広告掲出と収入には歓迎の声が大きいと聞くが、では協会側に課題はあるのか。2月に行われた日本協会のブリーフィングでは、岩渕健輔専務理事に、こんな質問をしてみた。

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「収益面でチームに偏りが出ると思うが、どう考えるのか」

 同専務理事は「そういう議論は理事会でもありました。間違いなく差がでると。その一方で、なんらかのキャップ(上限)をかけるのではなく、先ず今持っている権益を拡大して、各大学の努力を促すことで活動等が前向きに転がるようなら、そちらのほうがいいのではないかというところで落ち着いた」と説明している。勿論、個々のチームが自分たちの“営業努力”で得た収入を自分たちで受け取るのは当然の権利だろう。至極正当な回答だ。

 だが、個々の大学ラグビー部を見れば懸念材料もある。伝統校などのいわゆる人気チームとそうではないチーム間で、広告収入による格差が生じてしまう恐れがあることだ。先にも紹介したように、伝統校や強豪には、既に入場料収入等のアドバンテージがある。スポンサー支援を希望する企業が広告効果を考えれば、地上波での全国中継などがあるチームに価値を感じてもおかしくない。その一方で、露出の少ない中堅、下位チームへのスポンサー支援が少なければ、活動資金の差が従来以上に広がり、結果的に実力格差に繋がる恐れも否定できない。確かに自分たちのチームへの支援という名目で受けた企業からの資金を、他のチームと分け合うことへの疑問はあるだろう。だが、もしチーム格差が現状以上に広がることになるとしたら、自由競争は野放しでいいのか。統括団体としてのラグビー協会としても工夫が必要ではないだろうか。

 最後に、この“格差”に対する酒井監督の思いを紹介しておこう。

「確かに(格差が発生したら)悔しいですけれど、努力次第だと思います。僕たちのようなチームは、その勝負にも勝っていかなければいけないんです。そのような差を言い訳にしないで、むしろチャンスと捉えるしかない。人気チーム、強いチームの収入は1桁上かも知れないけれど、僕らは勝って正月を迎えられるかというところで売り込みにいかないといけないのです。だからこそ愛されるチームにならなければいけない。強いだけでもダメだし、愛されるようにね。たとえ負けても、来年また頑張れよと言ってもらえるような関係を作らないとね」

 スポンサー収入という新たなフェーズを迎えた大学ラグビーで、一時代を築いたモスグリーンのジャージーがどこまで新たな魅力を発信できるか。異色の指揮官とフィフティーンのグラウンド内外での挑戦が楽しみだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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