大学ラグビー関東王者が歌舞伎町で朝からゴミ拾い 異色の活動のウラに…セオリーに囚われぬ大東大黄金期復活への道

厳しい財政事情「寮費を聞いてびっくりしました」
多くの大学体育会(運動部)同様、ラグビー部の活動は原則的には大学側からの支援(運営費)、部員(保護者)からの部費とOBからの寄付などで賄われている。公式戦の入場料収入の一部もチームには還元されるが、早稲田大など集客力の高い人気チーム以外は多額の収益は期待できない。厳しい財政事情を酒井監督はこう説明する。
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「とにかくいろいろなものが値上がりしていますよね。就任してから寮費を聞いてびっくりしましたよ。僕らの時代の倍ですからね。学費も含めて、親は大変です。僕らの時代は試合会場に行くのも電車を使っていたが、今はチャーターバスでの移動ですしガソリン代も上がる一方です。医薬品や道具類なども含めてチームの出費が増えているが、その一方で予算は限られている。大学側の支援、OBらの寄付もありがたいですが、収支は厳しい状況です」
ほとんどのチームの監督が酒井監督と同じような苦悩に苛まれているはずだが、今回の規約変更で、大学チームも日本代表やリーグワン、海外プロチーム同様に胸などに企業名がプリントされたジャージー着用が認められ、広告収入を得られるようになった。広告掲出箇所は胸、背中、試合用パンツの後方左右裾部分の合計4か所。つまり最大でも4社からの支援が上限になる。掲出するロゴ、企業名などのサイズの制限や、スポンサー側にも消費者金融、公営ギャンブルなど広告がNGの業種も少なくない。
さらにチームにとって懸念材料になるのが、試合会場が設ける広告に関する規定だ。ジャージーを含むピッチ上で着用するウェア等への広告掲出に対しては支払いを科す施設がある。日本協会では「各スタジアムの規定に準じる。大会によっては主催者が負担するケースも有り得、チームは先ず主催者に確認する流れになる」とした上で、一例として日本スポーツ振興センター(JSC)が管理・運営する秩父宮ラグビー場、国立競技場では、1試合につき15万円の支払いが広告を掲載するチームに科されると説明する。例えば、秩父宮で1日に2試合が開催され場合は、ジャージー等に広告を掲載するチームだけが15万円を折半した額をそれぞれ支払うことになる。
大学チームの広告収入は、試合後の選手のビール代になるわけでも、個人の資産を増やすためでもなく、切実な活動費捻出のためだ。大東大が昨季ウェア広告で支援を受けたジムマネジメント社も、酒井監督が語ったように自社の広報活動という意味合いよりも、むしろ大東大ラグビー部というチームを応援したいという思いでサポートしている。他の大学でも、企業側の同じような思いでのスポンサー契約もあるだろう。そのような企業名、ロゴの掲載でも、試合会場によってはプロスポーツと同じ「広告」として支払いが求められるのも世知辛いはなしだが、指揮官は今回の広告解禁を前向きに受け止めている。
「スポンサーの相談をする企業さんには、(支払い)込みでというお願いもしながらやっていくしかないと思っています。僕らの時代と違って、今は少子化で大学も経営が難しい。その中でラグビー部に対しては、すごく協力していただいています。なので、後は自分たちで(運営費を)作っていかないといけないな、そういう時代になってきたと思います。大学に支援してもらいつつ、自分たちで動いていこうと。そのためには、自分たちも魅力があるチームにならないといけないと思っています。だから今回の清掃活動は本当にいい活動だったと思います。スポンサーにしても、清掃活動にしても、学生はそういうものを知っていかないとだめだと思うんです。世の中へ出て、社会にはいろいろな企業があるという一つの勉強になるし、企業の方も喜んでいただいて、地域も喜んでいただいた。そういう皆が喜ぶような活動が、これからも大事だと考えています」