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「由伸2世」と呼ばれた谷田成吾、最後のプロ挑戦の告白「今年ダメなら野球辞めます」

米挑戦では実際にメジャー傘下で実戦に出場した【写真:本人提供】
米挑戦では実際にメジャー傘下で実戦に出場した【写真:本人提供】

「不安」「安定」を投げうってまで「プロ野球選手」にこだわった理由

「将来への不安」と向き合い、「安定した生活」を投げうち、いざ決断した挑戦。ハードルは高かった。当初は1週間程度の短期間を想定していたが、滞在期間が長いほど、多くの球団を受け、返事を待てる期間も長くなる。通訳、代理人を立て、1~2か月は腰を据えた方がいいと勧められた。ただ、それでは自分の蓄えだけでは費用を賄い切れない。協力してくれたスポーツビジネスに携る大学時代の後輩から提案されたのが、クラウドファンディングだった。出資者を募り、挑戦を支援してもらうものだ。

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「正直、やりたくない」が本音だった。自分の挑戦を誰かにお金を出してもらうことに対する葛藤に悩んだ。「今年、一番勇気が必要だった決断かもしれない」と言う。自費で1週間で帰るか、最大限の可能性を求めて2か月挑戦するか。悩みに悩み、最後は後者を選んだ。集まった金額は200万円を超えた。想定を上回るものだった。感謝と同時にプレッシャーにもなった。そして、渡った米国。貴重な資金を最大限に節約するため、治安の悪い地域の安いモーテルで身の危険を感じて過ごす夜もあった。

 アリゾナに滞在し、自分で球場を借りて各球団関係者を集め、トライアウトを実施。興味を示した球団は複数あった。タイガースはGM以下、スカウト、コーチも含めて視察し、テストをやってくれた。ナショナルズは紅白戦に招待し、実際にユニホームを着て試合に出してくれた。「あとは上と相談する」。しかし、最後の最後で契約の話をもらえなかった。自分への無力さと支援者への申し訳なさに打ちひしがれた。それでも、応援してくれる人のためにも立ち止まるわけにはいかなかった。

帰国後に徳島入りし、NPB挑戦を目指した【写真:本人提供】
帰国後に徳島入りし、NPB挑戦を目指した【写真:本人提供】

「結局、うまくいかなかったから、本当にこういう形を取ったことが正しかったかは今も分かりません。ただ、挑戦させてもらったことには感謝しかないです。今年1年は全力でプロを目指すと決めていたので、その後は日本の独立と米国の独立のどちらを目指すか迷ったけど、どちらがプロになれる確率が高いかを考えたら、日本の独立の方が育成でNPBに行ける確率が高い。目標は何としてもNPBかMLBに入り、プロ野球選手になるということ。それを考えた結果、日本の独立に行こうと思いました」

 こうして帰国後、徳島の門を叩いた。聞いていると、すべての決断は「プロ野球選手になれるか」によって軸を成し、その可能性が高いか低いかのみで判断している。リスクなどは後回しに映る。慶応、慶大、JX-ENEOSと野球エリートを歩んだ選手が、ここまで“向こう見ず”な判断することは異端と言っていい。浮かぶのは、そこまでしてプロ野球選手になりたい理由は何なのか、という疑問だ。

「なりたい自分の像があるんです。こういう人間になりたいっていう。その中に、なりたい野球選手像がある。大学生の時、周りが就活して社会の一員になっていく中、自分はなぜプロ野球選手を目指すのか、そもそもプロ野球って何なんだろうと考えた。プロ野球のない国、プロスポーツもない国はある。娯楽として成り立っているものだし、なくても社会は回っていくけど、その中で高い人気を誇って人々の生活を豊かにするところにプロ野球の魅力があると思いました。それを理解した上でプロ野球の発展に貢献していける選手になりたいと思っています」

 だからこそ、プロ野球に属する独立リーグでもファンサービスはもちろん、どうすればもっとお客さんに足を運んでもらえるのか、結果を残すことを大前提にして、考えながらプレーしていた。夢のNPB入りへ、打棒を磨くだけじゃない。もう一度、高校球児のような泥臭いプレーを取り戻し、野球人としての原点を見つめ直した。それが、成長につながっている。

「打撃だけじゃない部分も見てほしい。ENEOSで言われていたことが、どんな打球でも一塁まで全力疾走する義務があるということ。最初は油断してできず、たくさん怒られ、身についた。今はそれがすごく大事と思っています。守備なら内野ゴロでもバックアップに入る、自分が出ていなくてもしっかりと声かけできるか。3時間も野球をやっていたら誰か1人は気を抜く瞬間がある。そういう時に先回りして声をかけられる人間であるか。独立リーグはみんな自分がプロに行くためにプレーしているけど、そういうことが大事じゃないかと。もちろん、打撃の技術を上げることを大前提にして、今はそういうものも強みにあります」

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