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世界の超一流ランナーに見た人生観 「だから人生は美しい」悲劇の転倒を笑った女王ハッサンの名言【世界陸上】

ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

世界陸上・女子1万メートル決勝ゴール直前で転倒も起き上がってゴールするシファン・ハッサン(左)【写真:ロイター】
世界陸上・女子1万メートル決勝ゴール直前で転倒も起き上がってゴールするシファン・ハッサン(左)【写真:ロイター】

ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第2回

 ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

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 第2回は「人生は山あり谷あり。だから、人生は美しい」と名言を残した30歳の鉄人女王シファン・ハッサン(オランダ)。19日の女子1万メートル決勝では優勝を目前に転倒し、31分53秒35で11位に終わる悲劇に見舞われた。苦い経験の直後にも明るくメディア対応。長時間に及ぶ取材にも丁寧に応じる姿の背景には、次世代へ伝えたい想いがあった。(文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

 ◇ ◇ ◇

 とても悲劇の直後とは思えない。ハッサンは弾ける笑顔でミックスゾーンに現れた。

「最後の20メートルあたりで、お互いに接触したと思う。それでバランスを崩して、こけちゃったわ」

 右肘には痛々しい傷。「血が出ているの。膝も……」と報道陣に指し示す。しかし、そこには悲壮感がないどころか、満面の笑みさえ浮かべていた。

 序盤はスローペースで進んだ女子1万メートル決勝。後方から集団を窺ったハッサンは、残り1周手前で一気にペースを上げた。10キロを走り終える人間とは思えないスピード。バックストレートで先頭に立つと、最後の直線でグダフ・ツェガイ(エチオピア)とのマッチレースだ。しかし、ラスト20メートルで転倒。会場は悲鳴に包まれ、起き上がった女王は歩いて11位でゴールした。

 まさかの結末にスタジアムは騒然。しかし、本人は終始明るい。「時には上手くいかないこともある。望ましいことだけじゃなく、辛いことも受け入れなくてはいけない。人生はいつも完璧というわけにはいかないから」

 金メダルを直前で逃してなお、極めてポジティブに対応。さらりと名言を残した。

「Life is always up and down. And that would make it beautiful.」

 人生は山あり谷あり。だから、人生は美しい。

 望まぬアクシデントでさえも、人生に美しさをもたらすものと言い換えられる。爽やかな語り口だが、その言葉には世界の超一流ランナーの力強さを感じさせた。

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