世界渡り歩いたタイの歴史的名手が明かす、日本サッカーが強くなった理由
日本とタイに共通する課題「ベンチの指示を仰ぐ暇があったら挑戦すればいい」
タイの選手たちはテクニックには優れている。しかし代表が強くならないのは、このメンタリティに問題があるからだと指摘していた。ドイツの選手たちに冒涜されたヴィタヤは、反骨精神を見せて自分の価値を証明した。しかしそれから欧州へ渡ったタイの選手たちは、厳しい環境に耐えきれずに次々に帰って来たのだという。
「タイ代表も時々強い国に勝つ。でもトーナメントでは勝てない。宝くじもそうだろう? いくら買ってもなかなか当たらない。継続性がないんだ」
日本も1984年ロサンゼルス五輪最終予選では、初戦でタイに2-5で完敗し、出場権を獲得できなかった。だがその後プロ化とともに、両国の差は逆転し、広がっていった。
ただし指導者に転身してみて、それでもアジア民族と欧米の違いは感じている。
「米国の選手たちは、何かあればすぐに聞いてくる。ミスをするのが選手の特権だと考えている。だから伸びるのも早い。日本や東南アジアの選手たちも、疑問があるのに黙って放っておくのはやめて欲しい。でも彼らは、試合中でもベンチの指示を仰ぐよね。そんな暇があったら、教えられていなくても、挑戦してみればいいんだ。失敗したら、また次の挑戦だよ」
28日に行われたタイ戦の日本代表のパフォーマンスは、決して誉められた内容ではなかったが、しっかりと結果は手にした。確かにそれが両国の現状を示しているのかもしれない。だが世界を渡り歩いたヴィタヤの眼には、共通の課題も映っていた。
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加部究●文 text by Kiwamu Kabe