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W杯優勝候補が仕掛けた“日本封じ”の罠 欧州遠征2連戦で得た学びと8強突破への宿題

藤井ディレクターが語った2023年の強化方針

 エディー・ジョーンズ、そしてフランス代表が示した「日本代表撃退法」に対して、来年9月開幕のW杯でどう戦うのか。もちろんジョセフHCと、右腕でジャパンの戦術を作り出してきたトニー・ブラウン・アシスタントコーチの宿題であり、手腕に期待したいところだが、2試合を見渡して思うのは日本の“らしさ”が十分に発揮できなかったことだ。スピードで上回ることで、攻守に相手にペースを掴ませず、常に自分たちの早いテンポという“土俵”で戦う。そこで初めて、フィジカルや経験値という相手の武器を十分に発揮させないゲームができ上がる。

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 イングランド戦、フランス戦以上に日本のテンポを引き出すには、スピードのある攻撃が求められるだろうし、そのためにはブレークダウンから、より早い球出しをして加速する必要がある。ボールキャリアーとセカンドマン、サードマンとの連係も完成度をさらに高める必要がある。同時に、リーチがフランス戦後に「課題はフィジカル。僕個人で当たっても前に出られないし、タックルしても返される。体が全然細い。体(の強さ)を仕上げていかないと」と語ったように、2戦とも接点で押し込まれたフィジカルの強靭化も重要なテーマになる。

 W杯イヤーとなる来年の強化方針を、藤井ディレクターはこう説明する。

「おそらくティア1との試合は来年は難しいと思うので、PNC(パシフィック・ネーションズ・カップ)だったり、一部報道が出ていましたが、あれ(マオリオールブラックス戦)がしっかり決まれば、今年ほどではないと思いますけれど、(準備)段階としては十分かなと思っています。リーグワンのバイウイーク(試合のない週)に1日集まったり、リーグで早くにシーズンを終えたチームから早いキャンプに入っていくと思う。代表全体での強化は、6月終わりか7月初めでしょう」

 試合数が限定されるなかで、ニュージーランド原住民系の選手で編成される「マオリ」との試合は、今秋のオーストラリアA代表同様に正代表チームではないが、それに準じた実力のあるチームとの対戦を組むことで、日本代表の試合経験を上げていく狙いがある。先に指摘したSOを中心に、代表選手の経験値、判断力を上げていく上でも、試合時間を伸ばしていくことは“宿題”を完成させるためにも重要だろう。そして同ディレクターは、今後の選手選考の方向性にも触れている。

「SO松田力也や、FBならセミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)、(FL)ジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)ら2019年W杯、スーパーラグビー(サンウルブズ)に出た選手、今回怪我で来られなかった選手は見てみたい」

 19年大会も含めて、これまで代表でプレーした選手については現在のパフォーマンスを確かめたいと、復帰のチャンスを与える可能性を語ったのと同時に、今秋選ばれたメンバーについては「変わると思う」と“下剋上”も辞さない。12月に開幕するリーグワンでのパフォーマンス次第では、新たなメンバーの招集も否定しないという。

 W杯メンバー32人を争うサバイバルは、いよいよ最終コーナーに入るが、求められるのは、秋の“宿題”を克服できるスピード、判断力、そしてフィジカルで、今季の代表をさらに押し上げることができる選手たち。選手をセレクションしながら、トゥイッケナム、トゥールーズではフル稼働できなかったジェイミージャパンという精密機械の完成度を、どこまで高められるのか。

“宿題”の提出期限はフランス時間の2023年9月17日。まさに今秋のテストで宿題を突き付けた、エディー・ジョーンズHC率いるイングランドとの一騎打ちで回答を出す。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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