なぜ、元オリンピック選手が大船渡で水泳を教えるのか 1年間の“夢レッスン”とは
中学時代は1日8000~9000m泳いだ伊藤さん、子供たちに明かした成長秘話
すべてのスケジュールを終えると、粋な計らいが待っていた。子供たちとチームを作り、伊藤さんも参加したリレーを実施。元オリンピック選手の泳ぎを見て、子供たちは大喜び。これから遠隔指導となっても信頼し合い、コミュニケーションを図りやすくなるように、との伊藤さんの思いが充実した時間を生み出した。
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クリニック後にはもう一つ、大切なイベントが残されていた。まずは伊藤さんのトークコーナー。意外にも「喘息が良くなるように」との母の配慮で生後6か月で始めたという競技人生。中学時代は1日8000~9000メートルの猛練習に打ち込み、15歳で日本代表に選出されると、初出場した08年北京五輪は「緊張していることも気付かないくらい緊張していた」という思い出を明かした。
続いて行われたのは「夢宣言」。子供たちが「将来の夢」「未来のわたしの街をどうしたいか」「1年後の約束」を発表する。子供たちは思い思いに「水泳選手」「イラストレーター」「建築家」という夢や「平泳ぎで25秒を切る」「クロールで50メートルを泳ぐ」「勉強も水泳も諦めずに頑張る」という約束を伊藤さんに宣言した。
大事なのは、単に泳ぎが上手になることではなく、水泳を通じ、目標を持ち、達成するために努力の大切さを知ること。何より、目標を持って行動することが、人生を豊かにすること。そんな願いが、この企画には込められている。最後に1日の指導を振り返り、伊藤さんからも子供たちに“約束”を投げかけた。
「初めての指導でも、みんな泳げるようになっていました。集中して上手になりたいと思うことが上手にしてくれる近道と感じました。水泳を通していろんなことに一生懸命になってくれたらうれしいです。それができたら、あとは楽しく。これからみんなともっともっと仲良くなっていけたらうれしいです」
これから月に1回、オンライン上で指導を繰り返し、来年3月に行われる成果発表を目指した日々が始まる。やがて梅雨が明けると、東北にも暑い夏がやってくる。秋を過ごし、厳しい冬を越えた先に子供たちは、どんな成長した姿を見せてくれるのか。元オリンピック選手と10人の子供たちの挑戦が始まった。
(THE ANSWER編集部)