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フィギュアのルール改正、選手への影響は? 今季の演技に見える変化と新時代の“戦略”

イリア・マリニン【写真:ロイター】
イリア・マリニン【写真:ロイター】

マリニンの「3回転ルッツ+3回転アクセル」は隠れた武器

 スピンが厳しくなった一方で、得点増につながる改正もあった。ジャンプシークエンスだ。アクセルを後半につける連続ジャンプは「シークエンス」と呼ばれ、昨季までは基礎点の80%しかもらえなかった。右足で着氷した後、左足に踏み変える動作の時に体勢を立て直せるため、難度が低いとされてきたのだ。

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 しかし、羽生結弦が2018年に世界初成功させた「4回転+トリプルアクセル」のように、実際には難度の高いジャンプをもっと評価すべきという考えから、シークエンスも100%の基礎点に。アクセルジャンプが得意な選手にとってはバリエーションが広がった。

 すると、勢いのある選手たちは早くもこのルール改正に、戦略的に対応してきた。マリニンは、フリーの最後のジャンプに「3回転ルッツ+3回転アクセル」を配置。スケートアメリカでは基礎点15.29にGOE加点も加わり、このジャンプだけで16.66点を獲得した。なんと4回転アクセルで得た16.61点よりも高く、隠れた武器が光る戦略となった。

 また三浦佳生(オリエンタルバイオ・目黒日大高)も、演技後半に「トリプルアクセル+ダブルアクセル」を入れ、これが合計14.14点という大きな得点源になり、GPデビュー戦で2位という活躍へつながった。スケートアメリカでは男子12人のうち6人が「シークエンス」で得点増を狙っており、今後も組み込む選手は増えていくだろう。

 もちろん世界王者の宇野も、シーズン冒頭から「シークエンスも練習したい」と宣言していた通り、ジャパンオープンでは「トリプルアクセル+ダブルアクセル」を演技後半に入れて、15.10点を獲得。シークエンスの流行にキャッチアップしている。

 またルール改正の中で、選手の滑りに影響が出るのは「コレオシークエンス」だ。「スケート特有の動きをより多く見せてほしい」という考えから、コレオシークエンスは「スケーティングムーブメントを2つ以上入れること」となった。例えばスパイラル、スプレッドイーグル、イナバウアー、ハイドロブレーディング、2回転までのジャンプ、スピン、さらには名前のない様々な動作のこと。今まで以上に、曲の特徴を反映した動作や、美しく流れるような動作など、質の高い滑りが求められるようになった。

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野口 美惠

元毎日新聞記者のスポーツライター。冬季五輪は2010年バンクーバー大会から現地取材。自身のフィギュアスケート経験をもとに技術面を丁寧に描写した記事に定評がある。スポーツ専門誌などに幅広く寄稿。著書に『伊藤みどり トリプルアクセルの先へ』(主婦の友社)、『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)など。

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