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田中希実の誰も否定できない3種目挑戦 涙で終わった10日間、闘い続けた「恐怖」の感情【世界陸上】

あえてレース展開を想定せず「1種目に絞った方がいいと思われるかもしれないが…」

 レースが多く、疲労があるか否かを練習で試すこともできない。だからこそ、「やってみないとわからない」と挑戦心を持ち続けた。レース中の感触では「疲労感が凄くあったわけじゃない」と連戦の影響を否定。「明確に入賞を目指していかないと、途中から疲労を言い訳にしてしまう。入賞はずっと意識して走れた」。ペースの上下に対応できなかったのは「力不足」と言い切った。

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 事前にレース展開を考えていなかった。「こういう言い方をしたら、1種目に絞った方がよかったんじゃないかと思われるかもしれないけど」と前置きした上で、理由を明かす。

「展開を考えても仕方がない。万全の状態ならいろんなレースを想定して、対応できる体を仕上げると思う。けど、今は今の体でできることをするしかない。考えるより、どんなレースになっても『いかに自分を見失わずに走れるか』という精神的な部分に重点を置いた」

 結果論なら誰にだって言える。どうなるかわからないから挑戦し、挑戦するから得るものがある。無謀ではない。22歳にして、3種目で日本記録を持つランナー。すでに多くの「日本人初」を打ち立てたアスリートの境地があった。

「恐怖がある中でも挑戦するのはなぜか。自分が身をもってやってみて、初めて『結果より過程が大事だ』と胸を張って言えると思う」

 自身で言葉にしたように、何事もやってみなきゃわからない。やらずに無難な道を走る選択肢はない。答えを出すために挑戦した。「でも、今日は最後までくらいつくことができなかった」。順位も、タイムも残せなかった大会。悔いが残った。

「結果が得られなくても、最後までくらいつければ『結果より過程だ』と胸を張って言えたかもしれない。けど、途中で離されてしまい、全部が中途半端になってしまったんじゃないか。そういう悔しさがある。かといって、1種目に絞った時にどこまで勝負できたかもやってみないとわからないこと。とにかく、3種目やった結果の中で力不足だった」

 妥協しなかったことは言い切れる。事実をありのまま受け止めた。来年8月はブダペスト大会、24年はパリ五輪。挑戦の道は途切れることはない。

「今回に懲りるんじゃなくて、今回の経験があったからこそ次に繋がるように。次は1つに絞るかもしれないし、もう一回3種目でどこまで戦えるかやってみたいと思うかもしれない。その時の自分の心に挑戦し続けたいなと思います」

 何かを成した人は、いつだって挑戦を続けてきた。跳ね返された2度目の世界陸上も、「強いランナーになる」という夢の1ピースだ。夕日を浴び、静まり返ったオレゴンのトラック。止まらない涙に手を添えるように、そっと西海岸の乾いた風が吹いた。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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