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わずか1年で3チームが休部&規模縮小 新リーグ創設の日本ラグビーが直面する課題

苦々しい経験をラグビー界の未来へ繋げるべき

 チームの強化縮小、リーグからの離脱を考える上で、もう1つ忘れてはいけないことがある。過去に、このような厳しい状況に置かれたチーム・企業から学ぶことだ。

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 かつて廃部や強化縮小という苦々しい経験をしたチームの1つが、セコムラガッツだ。サニックス同様に2003年のトップリーグ開幕メンバーという“暖簾”を持つが、09年に本社が社員選手中心の強化に切り替えている。チームや企業内の努力で、現在はリーグワンに次ぐ位置づけの「トップイーストリーグ」で2021年度シーズンはAグループ3位。上位争いを展開するまで実力を取り戻してきたが、このようなチーム、企業が、どのような考え方で強化縮小に至ったのか、企業側の事情や判断、チームとしての対策などを知ることには、今後にも繋がる貴重な学びがあるはずだ。

 だが、セコムのチーム関係者に聞くと、リーグ、協会側から過去にヒアリングを受けたことはないという。コカ・コーラ関係者からも昨年、協会、新旧リーグ関係者から、そのような目的での接触はなかったと聞いた。強化縮小までの経緯、そして、その後にチーム内、社内で何が起きていたのか。それに伴う問題点や、リーグ・協会としてできることがあるのかを模索するためにも、母体企業も含めた現場の声に耳を傾けるべきだろう。

 新しいものを生み出したい、新たな価値を創りたい――。こんな思いで改革に挑戦する姿勢は決して間違いではない。だが、日本ラグビーでも、様々な蓄積、失敗も含めた紆余曲折、そして次世代に引き継がせたい遺産を積み上げてきた。過去の失敗、成功から学び、未来に繋げる作業がなければ、新しい挑戦も吹けば飛ぶような薄っぺらいものになりかねない。

 リーグも参入チームも重視するファン・ファーストという観点からも、今回の休部問題を考えるべきだろう。3月に行われたリーグ側の、NTTグループ2チームの再編に関するメディアブリーフィングでも、企業側のチーム再編の理由は入念に語られたが、応援していたチームが強化を縮小することを心配するファンへの思い、発信という面では、果たしてどこまで訴えるものがあっただろうか。メディアブリーフィングと銘打たれたのであれば、取材した報道陣を通じてファンにどのようなメッセージを送りたいのか、どう向き合うかが求められた。NTTグループ側としても、再編後の新たなチーム運営会社が立ち上がらない時点で多くを語れない事情があったとしても、現行の2チーム・企業ともにプレスリリース1枚では、どこまでファンの思いに応えることができただろうか。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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