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フィギュア界にかつてあった“4回転論争” ひたすらに理想を求めた高橋大輔の銅メダル

表彰台で銅メダルを掲げる高橋大輔【写真:Getty Images】
表彰台で銅メダルを掲げる高橋大輔【写真:Getty Images】

4回転ジャンプで転倒も観衆を魅了する圧巻の演技

 トリノの悔しさを晴らすために立つ以上、“ただ出場した”だけで終わるわけにはいかなかった。

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「この4年間、金メダルを目指してきました」

 迎えたショートプログラムの『eye』――完璧だった。3つのジャンプはここまでの大会で最高の出来で成功。持ち味のステップの切れも見事だった。得点は90.25点。自己ベストの更新に何度もガッツポーズを繰り返した。

 中1日を置いて、フリーを迎える。曲は『道』。

 両手を枕に寝ているポーズからスタート。

 最初のジャンプ。高橋が跳んだのは4回転トウループだった。着氷はならず、転倒。だが、その失敗に呑まれることはなかった。トリノの時、出だしで躓いたのを引きずったのとは異なっていた。

 小さなミスはあったものの、時にコミカルに、でも哀愁と切なさも漂わせる情緒ある演技が引き締める。

 フィニッシュ。高橋はほっとしたような表情を浮かべる。

 得点は156.98点。ショートと合わせて247.23点、この時点で2位。続くジョニー・ウィアー(米国)が高橋を上回れなかった瞬間、日本男子初のメダリスト誕生が決まった。最終滑走のエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)に抜かれたものの3位。優勝したのはエヴァン・ライサチェク(米国)。フリーの演技構成点ではライサチェク、プルシェンコより高橋が高かったことも、演技の内実を示していた。

 堂々、表彰台に上がった高橋は晴れやかな笑顔で、観客席に手を振った。

 実はフリーを前に報道関係者などの間で議論が交わされていた。4回転ジャンプを回避し、成功率の高いジャンプを入れたほうがメダルを確実に狙えるのではないか、という意見が出ていたのだ。

 だが、高橋はその選択肢を心の中に用意していなかった。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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