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フィギュア界にかつてあった“4回転論争” ひたすらに理想を求めた高橋大輔の銅メダル

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

2010年バンクーバー五輪でアジア人の男子シングル選手として史上初のメダルを獲得した高橋大輔【写真:Getty Images】
2010年バンクーバー五輪でアジア人の男子シングル選手として史上初のメダルを獲得した高橋大輔【写真:Getty Images】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#15 「フィギュアスケート五輪激闘譜」2010年バンクーバー五輪・男子シングル編

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

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 今回は過去3大会の激闘を振り返る「フィギュアスケート五輪激闘譜」、2010年バンクーバー五輪の男子シングル編だ。2大会連続出場となった高橋大輔が、アジア人の男子シングル選手として史上初のメダル獲得という快挙を達成。今日まで続く日本男子フィギュア隆盛の礎を築いたが、そこには果敢に4回転ジャンプに挑み、理想を追い求めたスケーターの姿があった。(文=松原 孝臣)

 ◇ ◇ ◇

 2010年バンクーバー五輪のフィギュアスケート男子シングルは、金字塔を打ち立てた日本人スケーターの姿とともに刻まれている。

 この大会では開幕前から、男子では論争が起こっていた。4回転ジャンプを回避する選手たちがいることへの批判と、それに対する反論がぶつかりあっていたのだ。

 背景にはルール改正があった。スピンやステップのレベルをどう取ればいいのかといった試行錯誤があり、選手は新ルールへの対応に手いっぱいになっていた。そのため4回転ジャンプに手が回らない選手が増えていたのだ。リスクの高い4回転ジャンプを跳ばない選手が増え、好成績を残すようになっていたことを問題視する選手や関係者たちがいた。

 そうした過渡期の中で開かれた大会に、高橋大輔もいた。

 2006年トリノ大会に続く2回目の五輪だった。ただ、辿り着くのは容易ではなく、大きな試練を乗り越えて迎えた大会だった。

 トリノで8位入賞したもののフリーでの演技を悔い、雪辱を期して進んでいた高橋にアクシデントが襲ったのは2008年10月末のこと。練習でトリプルアクセルを跳んだ際に負傷。診断の結果は右膝前十字靭帯断裂および半月板損傷だった。競技人生を左右する重傷だった。

 手術を受け、リハビリに取り組んだ。悲鳴をあげるほど厳しいリハビリ、テレビの向こうでは元気に滑る選手たち……時に気持ちが折れそうになりながら踏み止まった高橋は、五輪イヤーである翌シーズンに復帰。大会を経ながら復調し全日本選手権で優勝。ようやく辿り着いた五輪だった。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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