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一流サッカー選手と「遊び心」 元仏代表監督が実験、指導者が理解すべき点とは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。2回目となる今回は、かつてフランス代表を率いたローラン・ブラン監督の興味深い実験を例に、トップ選手が備える“遊び心”に迫る。

2012年に行われた欧州選手権(EURO2012)でフランス代表を率いたローラン・ブラン監督【写真:Getty Images】
2012年に行われた欧州選手権(EURO2012)でフランス代表を率いたローラン・ブラン監督【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:ブラン監督がフランス代表で実施した実験

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。2回目となる今回は、かつてフランス代表を率いたローラン・ブラン監督の興味深い実験を例に、トップ選手が備える“遊び心”に迫る。

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 サッカーは、アンビバレントなスポーツである。例えば、サッカー監督は「確固たる信念を貫くべきだ」と言われる一方、「決して頑固にならず、柔軟でなければならない」とも説かれる。相反する考え方によって成立しているのだ。

 結局、その場に応じて最適解を示すしかない。正解はどのようにでも導き出される。答えは表裏一体だ。

 選手に問うべきモラルに関しても、例に漏れない。

 例えば、ステレオタイプのサッカー選手としての適性はあるだろう。挨拶ができる、人の話を聞ける、約束やルールを守れるなど一般的な真面目さも、それらの一つかもしれない。秩序の中で、しっかりときちんと暮らせるか。真面目さや勤勉さは集団生活において亀裂を倦まず、協調性に通じるものだからだ。

 しかしながら、品行方正な選手だけで勝てるのか。あるいは従順で決まりを守る選手が、必ずトッププロで活躍しているのか――そこは検証の余地があるだろう。

 ローラン・ブラン監督が選手に対し、ある実験を行ったことがあった。ブランはフランス代表センターバックとしてワールドカップ、EUROで優勝し、バルセロナ、マルセイユ、マンチェスター・ユナイテッドなどでも活躍した。監督としてもボルドー、パリ・サンジェルマンで多くのタイトルを獲って、EURO2012でフランス代表も率いている。

 その実験でブランはミーティングと称し、「12時から13時の好きな時間に集合」と選手たちに伝えた。トレーニングと伝えなかったのは、それだと体のケアで事前に来てしまう選手がいるからだった。選手の行動パターンを検証するものだったが、結果、ほとんどの選手が13時、5分前にどかどかと部屋へ入ってきたという。余裕をもって、ミーティングの準備をする選手はほとんどいなかった。ギリギリに滑り込んだ選手は主力で、間に合わなかった選手は定位置をつかむ力がないのは、興味深い検証結果だった。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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