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5戦全敗に終わった日本 地殻変動が起こる世界の女子7人制ラグビーで生き残れるのか

パリ五輪へ向けて考えなければいけないこととは?

 終わってみれば、前回リオ大会でメダルを獲得したチームで再び表彰台に立てたのは、初めて金メダルを掴んだニュージーランドだけ。パリで開催国優勝を目指すフランスが前回の6位から決勝まで勝ち上がるなど、2024年へ向けて地殻変動は続くだろう。

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 選手個々の身体的にも進化を感じさせた。ハムストリングスからヒップ上部にかけた筋肉の付き方とそのフォルムが、数年前の女子選手、そして今大会での日本代表との違いを印象づけた。

 男子よりも筋量が少ない女子選手が、7人制に必要な、より短い時間で走力をトップギアまで上げるために、そして左右へのステップを駆使しながらも減速を極力抑えながら走るために挑んできた“証”が、女子セブンズをさらにスピードと躍動感に満ちた競技へと成長させるはずだ。

 わずか3日という競技期間だったが、世界の強豪、進化を続ける新興チームが見せた煌めきが、日本だけが取り残されているような感覚をさらに印象づけた東京五輪。日本代表を率いたハレ・マキリ・ヘッドコーチ(HC)にとっては困難の連続だったろう。全日程を終えて、東京2020をこう振り返っている。

「残念ながら、私たちが目指していたゴールを達成することはできませんでしたが、チームの努力が不足していたわけではありません。HCとして選手やスタッフに求めることは常にベストを尽くすことです。この経験から得た貴重な学びを、女子セブンズ日本代表の更なる強化に今後役立てていけるものと考えています」

 就任が決まったのは、五輪開幕まで7か月の昨年12月。最高峰の舞台でチームを勝たせるためには、あまりにも少なすぎる準備時間でオファーを受け、強化に取り組んできた。宗像サニックスで攻撃的なバックローとして活躍した現役時代は、どんな試合でも勝つことへの執念を発散させてきた指揮官ににとっては、今回の結果の悔しさは我々の想像以上だろう。

 猛省するべきは、長らくチームを浮上させられなかった前強化体制を引き延ばし、相手選手のタックルをかわせないほどのギリギリで放られる“ホスピタルパス”まがいのバトンタッチをさせてしまった人たちだろう。あまりにも後手後手の判断だった。

 真剣かつ深刻に、今から考えないといけないのは、2024年に迫るパリ五輪をどうするかだ。予選がある次回大会までに残された時間は3年どころではない。明日から強化を再開してもいい。世界の急速な進化を見れば、強化を断念するというのも選択肢の1つではあるが、競技人口の拡大、ラグビーの普及を考えれば重大かつ深刻な決断になる。

 わずか数年でライバルから目標に転じた中国に勝つにはどうすればいいのか。あの体躯も、パワーも、2年ばかりで追い付くのは容易ではない。ではスピードか、スキル、戦術か。いずれにせよ、どのエリアを鍛えるにしても他国のコーチ、選手から「世界一」と言われるレベルまで引き上げなければ、パリどころか、アジアでさえ勝ち抜くのは容易ではない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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