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5戦全敗に終わった日本 地殻変動が起こる世界の女子7人制ラグビーで生き残れるのか

日本が圧倒された中国から感じる世界レベルへ成長するポテンシャル

 日本が苦闘を続けた東京五輪だが、世界の女子7人制は地殻変動が起きている。

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 日本が17-21で敗れたケニアは、リオ五輪では24-0と快勝した相手だった。だが、加速力抜群の躍動感溢れるアタックには無限の伸びしろを感じさせた。ロスタイムの逆転トライという幕切れだったが、それも、ケニア選手が個人プレーに走らず、仲間にパスしてボールを生かしていれば、そこまでもつれる前に勝負は決まっていただろう。

 日本は終盤のケニアの猛攻に、今大会で最高の防御を見せていた。だが、最後の最後に防御をこじ開けられたのは、ケニアがボールさえ持てれば必ずどこかで日本の防御を崩せるという自信を持って攻め続けていたからだ。

 すでに触れたように、中国はその進化を加速させている。2年ほど前なら日本とやり合うアジアのライバルだったが、今は認識を改める必要がある。欧米、南半球の強豪に近づくポテンシャルを持つ強豪と考えるべきだ。同じ東アジア圏の中国だが、腰骨の位置が高く、日本選手とは異質な長いストライドを生かしたランは真似できない武器だ。

 いまや自分から進んで体を張り、スキルでもフィジカル面でも、日本を追い抜くほどのレベルに達している。東京五輪では、開催国のために予選を免除された日本だが、パリ五輪へ向けたアジア予選では、この急速な進化を続けるチームが強大な壁になるのは間違いない。

 日本を圧倒した中国は、5-7位決定戦で米国に14-33で屈したが、スコア以上に互角の戦いを演じてみせた。結果的にトライまでつなげられたが、陳可怡の目を見張るハードタックル、唐銘琳のチェンジオブペースを駆使した独走と、五輪でもトップクラスの能力を見せつけた。特に陳は、イングランドや南半球といった最高峰の女子リーグで経験を積めば、世界レベルの選手に成長するポテンシャルを秘めている。

 そして、中国以上の進化を見せたのがフィジー。男子は五輪連覇を果たすなど世界屈指の強豪だが、女子チームは対照的に世界を舞台に優勝争いに食い込むような位置にはいなかった。リオ五輪でも8位入賞と、日本よりも上位の成績は残しているが、男子代表のような天性のハンドリング、ボールをつなぐ意識や変幻自在なランはなく、ここ数年でようやくその“マジシャン”の遺伝子を見せ始めている。プール戦では、リオ五輪銅メダルのカナダを26-12で下すと、準々決勝で金メダルのオーストラリアに14-12で競り勝ち、3位決定戦では同4位の英国を21-12で倒して銅メダルに辿り着いた。

 長いリーチを生かしたハンドリングと快足という天性の能力をようやく身につけ始め、加えて攻守にセットアップする早さがしっかりと仕込まれているのには目を見張る。才能とコーチングが融合された強化がこのまま進めば、3年後のパリでは、開催国フランスとの「FvsF」決勝も夢物語ではないだろう。

 他にも、数シーズン前には日本と互角の戦いをしていたロシアが英国ら強豪相手に見せた、体の接着面積が高い、まるでレスリングコーチに教え込まれたような密着タックルや、決勝トーナメント進出を逃した失意のカナダがブラジル戦前半で披露した、ブレークダウンで全員が密集を離れ、そこから仕掛けたカウンターラックからのトライへ転じるスピードなど、目を見張るプレーが随所に見られた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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