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五輪の理念にある「平和」の深い意味 世界の紛争地を見続けた日本人スイマーの視点

求められる観る側の姿勢、「知ること」が第一歩に

 また、何よりも受け止める側の観る姿勢が大事です。

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 例えば私の場合、難民選手団に関しては、彼らの出身国や五輪までの道のりを知りたくて、国内外問わずあらゆるメディアを検索し、リサーチします。彼らを知れば知るほど、「こんなに政情が不安定な中、よくぞやってきた!」と応援し、彼らが代表する難民の人々を想う気持ちが強く沸き上がります。

 過去に旅をした国の選手でもいいですし、ネットやテレビでちょっと見かけた選手、国など、気になったらその瞬間を逃さず、どうぞ「知ること」から始めてみてください。

 もう今大会は「みんなで一丸となって応援する」というものではないと思います。オリンピック・パラリンピック開催に否定的な人も多くいます。それでも、個々の感覚、視点を持って、スポーツから、パフォーマンスから、「何か」を感じ取ってほしい。そうすることで、「平和の祭典」は個々のなかで作り上げられると思います。
 
 今回の東京オリンピック・パラリンピックは、開催に至るまでの様々な経緯、問題により、素直に楽しめない気持ちでいる方、「観戦しない」と決めている人もいるようにヒシヒシと感じています。スポーツをこよなく愛するオリンピアンとしては、それがすごく残念です。

 しかし、スポーツの、そしてオリンピック・パラリンピックという大会の本来の価値や意義はなくなりません。また、選手たちはたとえ無観客であろうと、これまでの集大成として臨み、必ず最高のパフォーマンスを発揮するでしょう。

 あとは、私たち観る側次第です。一人ひとりがスポーツを通じ、競技を知り、選手を知り、その選手の国の歴史や文化を知る。そうやって、理解を高めることが、オリンピズムが掲げる、平和と平等な国際社会を実現する第一歩なのではないでしょうか。

■井本直歩子 / Naoko Imoto

 3歳から水泳を始め、小学6年時に50m自由形で日本学童新記録を樹立。中学から大阪イトマンに所属。近大附中2年時、1990年北京アジア大会に最年少で出場し、50m自由形で銅メダルを獲得。1994年広島アジア大会では同種目で優勝する。1996年、アトランタ五輪に出場。千葉すず、山野井絵理、三宅愛子と組んだ4×200mリレーで4位入賞。2000年シドニー五輪代表選考会で落選し、現役引退。スポーツライター、橋本聖子参議院議員の秘書を務めた後、国際協力機構を経て、2007年から国連児童基金職員となる。2021年1月、ユニセフを休職して帰国。3月、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーに就任。6月、社団法人「SDGs in Sports」を立ち上げ、アスリートやスポーツ関係者の勉強会を実施している。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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