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「為末大と武井壮」 陸上界の“走りのプロ”が指導者人生で影響を受けた2人の存在

秋本さんはJ1浦和の宇賀神友弥(手前)の指導も手掛ける【写真:@moto_graphys】
秋本さんはJ1浦和の宇賀神友弥(手前)の指導も手掛ける【写真:@moto_graphys】

青学大・原監督の“見える化”に学ぶべきこと

――指導者で多いのは部活・クラブの層です。そのカテゴリーでは成績で目に見えた結果を残せる人、天才といわれる逸材を育てた人にインパクトが生まれがちですが、逆に競技力の低い子たちを引き上げて組織のアベレージを上げる人、あるいは能力や成績より競技そのものの楽しさを上手に教えてあげられる人、いろんなタイプがいます。もちろん、優劣があるわけではありませんが、秋本さんはどんな指導者がこれから増えてほしいですか?

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「答える前に興味深かったのは、アベレージを上げる指導者の例です。青学大陸上部の原晋監督は“見える化”を徹底していると青学大OBの方から聞きました。『箱根駅伝に出るために』という目標があり、そのために夏合宿のメンバーに入ることが条件。過去のデータを数値化し、夏合宿に入ったら確か80数%が箱根を走ることができ、逆に入らずに走ったメンバーが少ないことを明示する。その夏合宿に入るためには、夏合宿までの大会に1万メートル〇分〇秒で走らないといけないと設定し、今度はその○分○秒を切るにはどんな練習する必要があるか……と、箱根駅伝を走るまでの道のりを“見える化”しています。

 ここからはプロスポーツの話になりますが、見ていると2軍だったり、練習試合だったり、置かれた環境で結果を残しているのに起用されない選手の例を見かけます。監督の『まだ若い選手の方がいいな』『ここで使うのは賭けだな』などの理由かもしれませんが、それは監督の『勘』に寄りすぎてしまっているのではないかなと。それでも、チームの結果が出れば指導者は評価されますが、個人は死んでしまいます。それって、僕は違うんじゃないかと思います。○○の成績を出せば、1軍に上げる、レギュラーにするという目標を“見える化”しているコーチほど、アベレージの強化が上手い気がします。

 もちろん、試合に出ている個々の能力が高ければ、勝つことができますし、個々の能力を伸ばす練習もされていると思います。ただ、チームスポーツの組織には不公平感が出ないことも大切だと思っています。『どう考えても、俺の方が上手いのにレギュラーになれないって。なんで?』と選手が思ってしまう選手がいたとします。監督からすれば、素行が悪いとか、大事なところで裏切るかもしれないとか、理由があるのかもしれませんが、そう思うのであれば、選手に伝えて理解をさせるべきです。単純な好き嫌いで起用していると選手に思われる不公平さを減らすことは大切だと思います。

 それで、僕自身はどんな指導者が増えてほしいかの答えに戻ります。僕は『俺がなんとかするんだ』という責任感を持ちながらも、いかに自分じゃできない領域を他人に任せられるかも重要だと思います。もし、僕が強豪陸上部の監督になったら、スペシャリストをかき集めます。ウエイト、中長距離、跳躍、投擲など、分からない領域はすべて任せ、自分の領域は領域でとやる。全部を自分でやろうとするのは不可能なので。できないことはできない、できる人に任せたら当事者も幸せなはずです。そういう風に指導領域を分担する感覚になれば、スポーツ界も変わる気がします」

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