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「為末大と武井壮」 陸上界の“走りのプロ”が指導者人生で影響を受けた2人の存在

秋本さん(中央)は「指導者の成長に終わりはない」と話す【写真:@moto_graphys】
秋本さん(中央)は「指導者の成長に終わりはない」と話す【写真:@moto_graphys】

「指導者の成長に終わりはない、そう思って毎日指導しています」

――冒頭で話した通り、最近は容易に情報を得られるようになり、指導者も常に学ばないといけない、知識をアップデートしないといけないという風潮も強まっています。一方で情報過多になり、例えば、教員試験に受かって初めて部活を指導したり、あるいはプレー歴のない競技を指導したりすることもあり、最初の一歩を踏み出すべきかは難しい側面とあると思います。秋本さんはこのあたりをどうお考えですか?

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「難しい問題ですね。僕の経験でお話をすると、指導機会のあった野球・サッカー・ラグビー・バスケはほぼ素人でした。どう学習したかというと、そのスポーツを見ることから入ります。片っ端から見て、片っ端からやって、片っ端から知る。『見る、やる、知る』という3つの柱を大事にしています。『知る』は最新の論文、データを見ながら、今どうなっているかを確認しました。でも、スポーツ界では実績のある選手がそのまま指導者になり、この『知る』の部分が欠けやすいように思います。自分で結果を出してきた選手がもう一度、自分がやってきた競技を勉強するということ。

 僕が現役時代に専門としていた400メートルハードルで僕より遥かに速い選手のコーチングをするとなったら、もう一度、その選手を知ろうとしたり、最先端の400メートルハードルのトレンドが何かを学んだりします。過去に築いてきた栄光、自分のやってきた感覚に頼ると、引き出しがそれしかなくなってしまうので。いかに学ぼう、知ろう、向上しようという感覚を持てるかにかかっています。面倒くさいという人に勉強しろといっても聞く耳を持たないし、逆効果かもしれませんが、自分に足りないもの何かという点を内省できることは指導者にとってすごく大切な資質だと思います」

――秋本さん自身はスプリントコーチがキャリアを積み、子供からトップアスリートを指導しながら、独自の立ち位置を築きつつあります。それでも、今後にまだ成長する余地があるとするなら、指導者としてどこを伸ばしたいと考えていますか?

「僕がそのスタイルを選んでいるのですが、僕の課題は指導の数を増やすことです。僕は同じ選手をずっと見る環境ではなく、子供からトップアスリートまで、いろんなサンプルを見て、速く走るとは何かを知るという経験を重ねています。でも、一人の選手をさらに速くさせるという経験はありません。ということは、一期一会でフォームをカスタマイズして、その人を速くすることはできるけど、関わった選手を1年かけて何秒短縮させるとか、どれくらい盗塁数上げるとか、そういう引き出しはないということです。ゆくゆくはそういうことをやっていかないといけないと強く感じています。

 あとは、自分自身、指導スキルはまだまだだと思っています。数年前にAという選手を見ていたら、こういうトレーニングメニューを出すけど、今だったらかなり変わっています。変わっているということがすべて成長かというと、違う可能性もあります。数年前のアプローチの方が実は良かった可能性もあります。なので、起きている症状に適切な薬を出して、服用の仕方まできめ細かく出していける感度感覚を高めないといけません。そのためには走りももっともっと見たり勉強したりして成長しないといけない。終わりはないです、正直、言って。毎日、そう思って指導しています」

■秋本真吾 / プロスプリントコーチ

 1982年生まれ、福島県大熊町出身。双葉高(福島)を経て、国際武道大―同大大学院。400メートルハードルを専門とし、五輪強化指定選手に選出。当時の200メートルハードルアジア最高記録を樹立。引退後はスプリントコーチとして全国でかけっこ教室を展開し、延べ7万人の子どもたちを指導。また、延べ500人以上のトップアスリート、チームも指導し、これまでに指導した選手に内川聖一(東京ヤクルトスワローズ)、荻野貴司(千葉ロッテマリーンズ)、槙野智章、宇賀神友弥(ともに浦和レッドダイヤモンズ)、神野大地(プロ陸上選手)ら。チームではオリックスバファローズ、阪神タイガース、INAC神戸、サッカーカンボジア代表など。昨年4月からオンラインサロン「CHEETAH(チーター)」を開始し、自身のコーチング理論やトレーニング内容を発信。多くの現役選手、指導者らが参加している。新著「子どもの足がギュンッと速くなる キッズラントレ」(KADOKAWA)を今月26日に出版。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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