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元日本代表MFはなぜ引退後ビジネスの世界へ? 浦和黄金期に感じたJリーグの未来への懸念

鈴木氏は腸内細菌研究が秘める可能性、国民の健康維持にも大きく貢献できると確信している【写真:AuB株式会社提供】
鈴木氏は腸内細菌研究が秘める可能性、国民の健康維持にも大きく貢献できると確信している【写真:AuB株式会社提供】

腸内細菌研究が秘める可能性、国民の健康維持にも大きく貢献できると確信

 逆に世間全体が経済の建て直しに必死に立ち向かおうとしている時に、こうしてスポーツに支えられていると言ってくれる人がいる。感銘して鈴木は決意を新たにした。

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「腸内細菌は凄く難しい分野です。それに僕らのベンチャービジネスは、大発見をして人類に多大な影響を与えるものではないかもしれない。でもアスリートのコンディショニングの先には、一般の方の健康促進がある。最近では、コロナで重症化した患者さんの腸内細菌を調べたら多様性が低かったという論文も出ていました」

 腸の研究が、感染予防でも貢献できる可能性を秘めていることと思えば、まさに時代に即した重要なテーマだという見方もできる。

「街の真ん中にスタジアムがあり、そこに地域の人たちが集まって来て楽しく体を動かす。寝たきりになるのではなく、みんなが健康長寿を全うできれば国の財政も助かります。僕らの研究もさらにスピード感を持ってやらなければいけないと思います」

 すでにフードテック事業に参入し、29種類の菌を配合したサプリメントを発売。さらに先日は元五輪代表選手の腸内細胞から新種のビフィズス菌を発見し、新商品開発の準備を進めているという。

「サプリメントを開発して何より妻から『良くやった』と誉められました。今まで彼女は、まったくそんなことに意識が向いていなかったんです。ところが飲み始めてからは、私と同じように凄く良い便が出るようになったそうです。こんなことを公で話すと、きっと怒られちゃうんですけどね(笑)」

 会社設立当初は「サッカー選手で、ビジネス経験がないのに上手くいくはずがない」と周囲から反対された。しかし世界に例を見ない数の特徴的なデータを揃えた今では、この研究こそが次世代アスリートを支援し、国民の健康維持にも大きく貢献できると、確信している。(文中敬称略)

[プロフィール]
鈴木啓太(すずき・けいた)

1981年7月8日生まれ、静岡県出身。東海大翔洋高校を卒業後、2000年に浦和レッズに加入。攻守を支えるボランチとしてレギュラーの座をつかむと06年のJリーグ優勝、07年AFCチャンピオンズリーグ制覇などのタイトル獲得に貢献した。15年の現役引退まで浦和一筋を貫き、J1通算379試合10得点を記録。日本代表としても28試合に出場した。現在は自ら設立したAuB株式会社の代表取締役を務め、腸内細菌の研究などを進めている。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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