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【One Rugbyの絆】聴覚障がい者の「静かで熱い戦い」 デフラグビーの魅力を知っているか

デフラグビーが普及することで、聴覚障がい者への理解が進むことにも期待している【写真提供:JDRFU】
デフラグビーが普及することで、聴覚障がい者への理解が進むことにも期待している【写真提供:JDRFU】

デフラグビー発展への提言「障がいの程度による持ち点制度に…」

 競技として、デフラグビーはまだまだ改善の余地もある。2018年に行われたデフラグビー7人制世界大会で優勝したウェールズとイングランドは、主に25デシベルから45デシベルの聴覚障がいを持つ選手でチームを構成。大きな声で話せば聞こえるレベルの障がいで「レフェリーのホイッスルも聞こえるので、すぐに次のアクションに移れます」と大塚さん。結果として障がいの軽い選手が多いチームが優勝、準優勝を勝ち取り、公平性に疑問が残る形となってしまった。

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 聴覚障がい者のオリンピック「デフリンピック」では、参加資格を一律55デシベル以上と定めている。これは補聴器を取ると音が聞こえないレベルのため、デフラグビーもこの基準に合わせれば公平性は保たれるが、これまで参加していた55デシベル未満の選手はどうすればいいのか。そこで「車いすラグビーみたいに障がいの程度による持ち点制度にしませんか、と世界デフラグビーに提案しているところです」と、大塚さんは話す。

 こういった活動をより多くの人々に知ってもらうためにも「One Rugby」での繋がりを大切にしたいという。参加の誘いを受けた時は「正直すごくありがたかった」と振り返る。

「One Rugbyをいいきっかけにしたいと思います。一般的なイメージとして、障がいを持っている人はかわいそうとか、助けてあげないと、というイメージがあると思いますが、障がいを持っていても一人の人間であることに変わりはありません。できることはあります。私たちがOne Rugbyにサポートしてもらう分、私たちもOne Rugbyを通じて他の競技をサポートできればと思います。

 僕は耳が聞こえないので、小さい頃は言葉を上手く話せませんでした。会話に入れなくて友達も少なく、いつもひとりぼっちでした。サッカーをやっていましたが、上手くいかずにそこで出会ったのがラグビー。ラグビーは言葉を使わなくても体と体のぶつかり合い、想いと想いのぶつかり合い、そして仲間が助けてくれるスポーツです。僕はラグビーによって救われてきました。なので、ラグビーに恩返しがしたい。ラグビーの持っている可能性をOne Rugbyを通じて、もっといろいろな人、聞こえない人、何かしら悩みを持っている人に知ってもらいたい。大げさかもしれないですが、ラグビーを通して人生を豊かにするきっかけにもなると思います」

 デフラグビーが社会に普及することで、聴覚障がい者への理解が進むことにも期待している。

「小さい時に、こんな経験をしました。僕は耳が聞こえにくいので、口の動きで言葉を読み取ります。話し相手にそう伝えたんですが、相手は良かれと思って、わざわざ僕の耳元で大きい声で話しかけてきました。でも、そうすると口の動きが見えないし、いくら大きな声を出しても聞こえません。こういう聴覚障がいに対する正しい知識が広まっていないところもあるので、One Rugbyを通じて多くの人に理解してもらえるとうれしいです」

 静かながら熱く燃える大塚さんの想い。One Rugbyから多くの人に伝わることを願いたい。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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