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本拠地どうする?日本代表との協力は? ラグビー新リーグ会見に感じた懸念と違和感

“エリアバッティング”への問題にはどう対応?

 抜本的な東京などでの“エリアバッティング”への方策、対策は十分な説明はなかったが、準備室側では各チームの置かれた状況に応じてより柔軟に対応していきたいという思いがあるのだろう。だが、この柔軟さが新リーグに期待される可能性を狭める恐れもある。例えば、府中市や千葉などでは多くの試合やイベントが行われる一方で長野市では皆無といったような、限られたエリアだけしか新リーグの恩恵や影響を受けられなくなる可能性がある。

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 谷口室長の発言にある「セカンダリー」という発想は、その偏りを是正させる思惑がある。第2の本拠地を作ることで、より多くの地域でラグビーを展開するためのアイデアだ。しかし、各チームの事情を考えれば、新リーグ発足に当たり自分たちの本拠地(ホストエリア)でも従来以上に積極的かつ継続的な普及活動やファンサービスが求められる中で、どこまで第2本拠地へ向けて力を注げるだろうか。新リーグ構想の骨子でもある地域に根ざしたチーム作りを進めるためには、まずは自分たちの本拠地での活動に力を注ぐことが重要だろう。

 説明を聞いていて感じたのは、果たしてこのセカンダリー地域の選択、指定をチーム任せでいいのかという疑問だ。様々な地域でのラグビーの普及を戦略的に考えるのなら、チームに任せるのではなく協会やリーグが主導的に“ラグビー開拓地”を定めて、試合やイベントをこの地域に投下したほうが効果的なのではないだろうか。

 2つ目の疑問である代表・協会とチームとの連携について、谷口室長はこう語っている。

「現在のコロナウイルスの影響で、海外のユニオン(協会)とリーグの関係は非常に緊張状態にあると一部で伝わっています。リーグはリーグとして試合をしなければ収益がでない。ユニオンはユニオンとして代表の試合をしなければ収益がでないということで、ここに緊張関係が出ますが、新リーグではそうならないように、できるならなるべく日本代表の強化につながるように皆さんにご協力を仰ごうと思っています」

 しかし、代表と所属チームの兼ね合いは、どの競技でも常に横たわる問題だ。疑問に感じるのは、果たして本当にTLチームが他競技にないような代表への協力体制をとっているのかということだ。昨秋のW杯へ向けては、母国開催ということもありチーム側が所属選手の代表合宿参加にも協力的な姿勢をみせていたことは間違いない。その後の日本代表の躍進がもたらしたラグビー人気を考えれば、いまも各チームには選手を代表活動に“供出”するメリットは間違いなくある。つまり現状では代表を優先することはチーム(企業)にとっても“買い”になるのは明らかだ。

 その一方で、各チームの関係者からオフレコも含めて話を聞くと、代表・協会への不満や疑問は少なくない。具体的には、代表合宿に選手を参加させても何度も当落選を繰り返されることや、所属選手の代表合宿や試合での怪我、コンディション不良などの連絡や説明の不十分さなどだ。過去には所属選手の怪我を、チームがメディアから聞いて知ったということもあった。現在は代表と各チームのメディカルスタッフ、コーチが選手の情報を共有するなどの改善が図られているのも事実だが、チーム側が諸手を上げて代表チームへの選手派遣を歓迎しているという判断には疑問が残る。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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