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「指導者が口を挟まない」リーグ戦を計画 部員減る高校ラグビー、強豪監督が描く未来

人数が限られていることもあり、練習中に松山吾朗監督が飛び入り参戦する場面もあった【写真:吉田宏】
人数が限られていることもあり、練習中に松山吾朗監督が飛び入り参戦する場面もあった【写真:吉田宏】

「クラブチーム化」を目指すと静岡ではマイナスに作用する恐れ

 その練習を見ていると、このチームの取り組んできたものが浮かび上がる。実戦形式のメニュー「アタック・アンド・ディフェンス」では、攻守双方の選手たちが定位置に戻りながら盛んに会話を繰り返し、プレーを確認している。プレーしながらも「もっと声出そう」「コミュニケーション取って」と誰からともなく声が出る。ゴロー先生も、練習中のかけ声があまり抽象的なものにならず、具体的な指摘になるようにとアドバイスを続けている。

 赴任前には、神奈川・平塚工科高でも取り組んだ部活とクラブチームとしての活動の融合を、新天地の静岡聖光学院でも試したいと語っていたゴロー先生だが、2シーズン目を迎えて、どう考えているのだろうか。

「そうですね、やるべきだと思います。うちも部員は少ないですけれど、そのわずかなメンバーの中でも、明らかな力の優劣がある。試合に出られない部員が出るというのは、なんとか変えたいんです。早ければ3月からでも始めていきます」

 静岡聖光学院は毎シーズン、花園を目指すレベルのチームだ。どうしても強化、そして勝つことが優先されるチームで、平塚工以上にクラブ化を行う難しさはないのだろうか。

「ここでは、クラブ化にこだわる必要はないかなと考えています。ある別の県の監督さんと話した時に、聖光がオープンクラブにして、(ラグビーの)競技人口の決して多くない地域でウチに子供たちが集まるとしたら、他が壊滅するなという意見を聞きました。静岡ではチーム数はこの20年減ってないが、部員数は半減しています。昔は30、40人いた部員が、今は14、15人で持ちこたえているチームがいくつもある。このギリギリのチームの中で、たぶん数少ない経験者が頑張ってくれている。そういう限られた経験者の子たちをこっちのクラブに持ってきてしまうと、本当にウチと東海大翔洋と浜松工以外はなくなってしまうんじゃないかなと思っています」

 競技人口、中学時代のラグビー経験者も少なくはない神奈川県では、様々な理由でラグビー部に参加できない子供たちがいたために、その受け皿としての“部活外クラブ”という形態がスムーズに作れた。だが、競技人口の違いがある静岡では、同じ流儀はマイナスになる恐れがある。

 そんな状況の中でゴロー先生が思い描くのは、静岡聖光学院を含めたチームが、県協会や高体連主催ではない、独立性、自主性を持ったリーグを作り、試合をしていく方法で、すでに周囲のラグビー部指導者とも話を続けている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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