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三浦龍司に「世界を見せてもらった」 東京五輪で決意新た、順大監督が描くパリへの道

2年後のパリ五輪で「同じような景色を見たい」

 三浦は東京五輪で長門監督をかつてないほど興奮させ、特別な経験をさせてくれた。さらに気持ちをくすぐるような言葉を返してくれたという。

「選手村から離村する時、三浦に『世界と戦う上でこれからやっていかないといけないことが多いなぁ』みたいな話をしました。そうしたら三浦が、『そんなに差を感じなかったです。今の取り組みでも十分戦えると思います』と言ってくれて、すごく嬉しかったですね。3000メートル障害の経験のない私の話を素直に聞いて、受け入れて、本当によくここまでやってくれたなぁという感謝の気持ちでいっぱいでした。

 ただ、それで満足したわけではないです。もっと世界で戦えるようにしていかないといけない。日本の宝を怪我などでダメにしないようにしないといけないと、責任の重さも感じました」

 その責任を果たすため、2年後のパリ五輪を見据えて、長門監督は考えていることがあるという。

「とにかく海外でのレース経験です。三浦自身も海外のタフなレース経験の必要性を感じています。だいぶコロナも落ち着いてきて、海外に行ける状況になってきているので、世界のレベルを感じる環境やレースには積極的に参加していきたいと考えています。また、高地トレーニングのような取り組みも必要だと考えています。現在は準高地で負荷を入れる程度です。システム的に取り入れることも試みないといけないのかもしれません」

 パリ五輪の時は、三浦は順天堂大を卒業しているが、実際には卒業をした数か月後に大会が来るので、長門監督が指導していく形になるだろう。

「僕自身、五輪を競技者として目指すことはできませんでしたが、今回の東京五輪でその虜になってしまいました(笑)。三浦が走っている姿を見ても思いましたけど、閉会式でパリの紹介VTRを見た時、また同じような景色を見たい、また(五輪に)行きたいなと思いました。駅伝で優勝を目指すことは当然のことですが、世界大会で見られる景色は全く別ものだと感じています。三浦のサンショー(3000メートル障害)だけではなく、その他の長距離種目でも五輪を目指していきたいですね」

【第1回】三浦龍司の「感覚と感性を理解」 五輪選手を輩出、順天堂大監督が重視する指導法

【第3回】箱根駅伝2位は「自信になった」 順大監督のチーム管理術、大切にする選手との距離感

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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長門 俊介

順天堂大学 陸上競技部 駅伝監督 
1984年生まれ、長崎県出身。諫早高校から順天堂大学に進学し、箱根駅伝は4年連続で9区を走った。卒業後はJR東日本に進み、2011年に順天堂大学陸上競技部のコーチ、16年に駅伝監督に就任した。3000メートル障害で塩尻和也、三浦龍司と2人のオリンピアンを輩出、22年の箱根駅伝では総合2位となりチームを15年ぶりのトップ3に導いた。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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