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結婚が「大きな転機になった」 一山麻緒のコーチが見た変化、“3食自炊”の姿に感服

一山麻緒の精神面での充実ぶりを語った永山忠幸コーチ【写真:編集部】
一山麻緒の精神面での充実ぶりを語った永山忠幸コーチ【写真:編集部】

通算5回の五輪で選手を「一度も上手く作り上げられなかった」

 5キロ8本の練習では、5本目まではペーサーがついて、その後ろを走る。残り3本は、勝負を決めるという想定のなかでペースアップしていく。

「本番で、そういうレース展開ができれば勝てる。そういう話をすると、彼女も『そうですね。それ、やってみましょう』と取り組んだのですが、その練習の成果が名古屋で出ました」

 東京五輪女子マラソンの選考レースは、大阪国際女子マラソンで松田瑞生(ダイハツ)が記録した、2時間21分47秒を破って名古屋で勝たなければならない。一山は29キロ付近からペースアップして、2時間20分29秒でフィニッシュ、東京五輪の出場権を獲得した。

「名古屋のレースは皆さん、驚かれたと思うんですけど、我々は練習でできていたので、想定内のレースでした。レース前日、一山くんが『29キロでスパートかけて、そのままトップで駆け抜けます』と言っていたのですが、私も同じ考えで『30キロ手前の給水で一番取ったら勝てる』と言いました。あとは、そこで行く勇気があるかどうかという話をしたんですが、行きましたね(笑)」

 一山は、東京五輪の女子マラソンに出場し、8位入賞を果たした。17年ぶりの女子マラソンの入賞だが、永山コーチは「悔しさしかない」と語る。

「メダルが獲れなかったことよりも、それまでの準備がしっかりできていなかった。選手も私も五輪までの間、満足できるプロセスでいければ、結果はおのずとついてくると思っています。五輪の日本代表をつかみ取るまでは想定内のプランで突き進めるんですが、五輪本番までの間は、福士くんの時も含めて5大会で一度も上手く作り上げることができていなかった。それが本当に悔しいですね」

 福士はアテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロと五輪に4度出場しているが、どの大会も万全で臨めなかったというのは意外だった。

「福士くんの場合、五輪という舞台で結果を出したい思いが強いので、高い設定での練習が続いて抑えが効かなくなり、最終的に故障してしまった。彼女は五輪に4回出ましたけど、そのうちアテネ、ロンドン、リオの3回は辞退したほうがいいぐらい状態が悪かったんです。福士くんの思いと練習を上手く噛み合わせることができなかったのは、私の責任です」

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永山 忠幸

資生堂ランニングクラブ 専任コーチ 
1959年生まれ、熊本県出身。東京農業大時代に4年連続で箱根駅伝に出場。2000年にワコールの監督に就任すると、福士加代子の才能を見出し、長距離走とマラソンで2004年から4大会連続で五輪出場に導いた。東京五輪の女子マラソン8位入賞の一山麻緒も指導し、今年4月に揃って資生堂へ移籍。専任コーチとして、24年パリ五輪出場を目指している。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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