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ドイツの子供は「話を聞かない」 自己主張の先で育むチーム内のコミュニケーション

3月から僕は息子がプレーするU-8チームで新しくコーチを務めることになった。ドイツに来てからの指導歴は15年になるが、これまではU-15やU-17、U-19と中、高校生年代をメインに見てきた。

コミュニケーション能力を育てる子供の自己主張【写真:Getty Images】
コミュニケーション能力を育てる子供の自己主張【写真:Getty Images】

【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――U-8チームを初指導、“遊び続ける”子供たち

 3月から僕は息子がプレーするU-8チームで新しくコーチを務めることになった。ドイツに来てからの指導歴は15年になるが、これまではU-15やU-17、U-19と中、高校生年代をメインに見てきた。

 小学生年代となるとU-13(小学校高学年)は担当したことがあるが、U-8(小学校低学年)となると本当に初めてのこと。これまでの経験を生かそうにも何もかもが違うので、すべてが新鮮で、すべてが挑戦だ。

「よーし、そろそろ始めようか。集まってー!」と言っても集まらない。しばらく黙って様子を見ていると、こっちの様子に気づいてはいても、「それはそれとして」みたいな感じで遊び続けようとする。少しずつ何人かが集まってくる。でも集まるのを待っている間に、集まっている子たちが遊び出す。ようやく集まったので「簡単な説明をして練習を」と思っても、ちょっと話し出したらもうまたふざけだしている。

 でも、それがたぶん普通なのだ。話を聞かないからと別に怒ることもない。ドイツでは幼稚園の頃にみんなでまとまって何かをするという習慣があまりないし、やらなければならないと教え込まれたりもしない。

 では何をするかというと、子供たちはまず、自分が何をしたいのか、どうすればそれができるのかという主張の仕方を学ぶ。その中では自分がやりたいからと何をやってもいいわけではもちろんなく、やってはダメな規則がある。そして他にやりたい子がいたら、お互いが納得するルールがないとダメだということを経験していく。コミュニケーションとは、自分の主張をするだけではなく、相手の主張を聞くことも大切だということを毎日の実践の中で学んでいくわけだ。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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