進学校で指導者不在、1人で公園走り全国6位に 褒めも怒られもしない環境「自分を裏切りたくない」知った努力の価値――中大・武田胡春
8日から4日間、神奈川の相模原ギオンスタジアムで行われた陸上の第104回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子1部・5000メートルに出場した中大の武田胡春(2年)。高校時代は指導者不在、たった一人で練習し、インターハイで6位入賞を果たした。「自分次第で限界はない」と話す20歳の実像に迫った。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

陸上・関東インカレで輝いた選手たち 女子1部・5000メートル/中大・武田胡春(2年)
8日から4日間、神奈川の相模原ギオンスタジアムで行われた陸上の第104回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子1部・5000メートルに出場した中大の武田胡春(2年)。高校時代は指導者不在、たった一人で練習し、インターハイで6位入賞を果たした。「自分次第で限界はない」と話す20歳の実像に迫った。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
ライバルたちとの差が開いても、不屈のメンタルで前を追い続けた。
40人で行われた5000メートル決勝。序盤からハイペースのレースとなった。先頭集団の真ん中付近についた武田。中盤で離されたが、最後まで力強く走り切った。タイムは16分50秒86で23位。「最低でも中大に得点で貢献したいと思っていた。最初からペースが速くて予想外だった。自分の力不足を感じた」。課題を分析し、また一つ成長の可能性を見つけた。
高校時代、異例の3年間を過ごしてきた。
偏差値68の公立進学校・小倉高(福岡)出身。「自分が住んでいた地域では偏差値が一番高くて憧れていた」と進学した。中学から始めた陸上競技では、全国都道府県対抗女子駅伝に出場するも全中には届かず。進路を考える際には「陸上のことはあんまり考えていなかった」と振り返る。

高校入学後、転機となったのは陸上競技部に所属していた同級生の徳山大暉(現・東大)の言葉だった。
「当時、陸上のレベルは私と同じくらいだったんですけど、『インターハイは出るよね』って当たり前みたいに言っていて。『インターハイってそんなに簡単に出れるの?』って思ったんですけど、話しているうちに『全国も夢じゃないんだ』って思うようになって……」
可能性を信じ、高校陸上に打ち込む覚悟を決めた。
とはいえ、部には陸上経験のある教員は不在。全国大会を目指すような部員もほとんどいなかった。たった一人で走る日常が始まった。