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批判覚悟で発言してきた陸上・新谷仁美 「真似できない」と野口みずきすら驚く言葉の力

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、スポーツから学べる多様な価値観を随時発信する。今回は、2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが東京五輪女子1万メートル代表・新谷仁美(積水化学)の魅力を解説。毎月掲載している連載「THE ANSWER スペシャリスト論」を五輪バージョンとしてお届けする。

野口みずきさんが新谷仁美の人間的な魅力などを語った【写真:奥井隆史】
野口みずきさんが新谷仁美の人間的な魅力などを語った【写真:奥井隆史】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#79

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、スポーツから学べる多様な価値観を随時発信する。今回は、2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが東京五輪女子1万メートル代表・新谷仁美(積水化学)の魅力を解説。毎月掲載している連載「THE ANSWER スペシャリスト論」を五輪バージョンとしてお届けする。

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 新谷は7日午後7時45分に大舞台に立つ。昨年12月に異次元の走りで日本記録を叩き出した33歳。競技者として残してきた結果はもちろん、歯に衣着せぬ発言でも注目を浴びてきた。有言実行をモットーとするランナーはどんな姿を見せてくれるのか。マラソンを専門種目とした傍ら、中長距離の経験もある野口さんに新谷の人間的な魅力などを語ってもらった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 言葉でも、背中でも想いを表現するランナーだ。新谷は12年ロンドン五輪以来2大会ぶり2度目の出場。昨年12月の日本選手権では、18年前の日本記録を28秒45も更新する30分20秒44で優勝を飾り、五輪切符を手にした。走りはさることながら、女性アスリートの生理の実情や東京五輪開催に向けたメッセージなども発信。言葉にも魅力を持つアスリートの一人だ。

 逸材として期待された高校時代から今に至るまで新谷に注目していた野口さんは、東京五輪を通じて他のアスリートや一般のファンに見てほしい姿があるという。

「新谷選手はプロ意識が本当に素晴らしい。自分の進むべき道をしっかりと確立していて、それに沿って行動できる人。ハングリー精神など気持ちの部分も見てほしいと思います。自分が走るということはどれだけのものなのかを知っている選手。走りで結果を出してくれますし、記者の質問に批判も覚悟で真摯に答えています。そういうところも、他の選手にはもっともっと見習ってほしい。しっかりと自分の言葉で発信すること。競技者としての新谷選手だけではなく、もっといろんな面の記事も読んでほしいですね」

 歯に衣着せぬ発言が話題になるが、新谷は「間違ったことは言っていない。間違ったことがあれば、しっかり指摘してくれるコーチがいる」と批判を恐れない。新型コロナウイルスのワクチン接種など答えづらい話題にも、明確な私見を述べてきた。アスリートでも批判の対象にされてしまう可能性のあるネット全盛の時代。「真似できないですよね。本当に素晴らしい」と野口さんは、類まれな発信力に目を見張った。

「私が現役だったら少し守りに入ってしまって、本音を言えなかったかもしれません。現役選手が何かを言って批判を受けて、競技にもネガティブな影響を与えるんじゃないかと考えることもあります。新谷選手は自分のため、他の選手のために発言しますが、それは周りのことを考えられているからこそしっかりと発言できるのかなと。自信があるのでしょうし、頭がいいのだと思います。

 自分がそういうキャラクターだから、自分の発言によって他の人からもいろいろな発言が出てくるといいなって考えているのかもしれない。本当に興味深いですし、こういう選手がどんどん出てきてほしい。でも、普段の取材では凄くかっこいいのですが、レース後のコメントでは少し昔の名残りみたいなものが……(笑)。そのギャップが凄くいい。レース後は“ハイ”になって疲れている時ですから」

 5月9日の五輪テスト大会。会場の国立競技場近くでは、五輪開催への反対デモが行われていた。新谷は「反対する人にも寄り添うべき」「国民の意見を無視してまで競技をするようじゃ、それはもうアスリートじゃない」という姿勢を示した。この姿が印象に残っているという野口さんは「中心選手として、覚悟を持って言葉を発していると思います。アスリートだけが特別ではない。ズバッと言えるのは素晴らしいですね」とした。

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野口 みずき

THE ANSWERスペシャリスト マラソン五輪金メダリスト

1978年7月3日生まれ。三重・伊勢市出身。中学から陸上を始め、宇治山田商高(三重)卒業後にワコール入社。2年目の98年10月から無所属になるも、99年2月以降はグローバリー、シスメックスに在籍。01年世界選手権1万メートル13位。初マラソンとなった02年名古屋国際女子マラソンで優勝。03年世界選手権で銀メダル、04年アテネ五輪で金メダル獲得。05年ベルリンマラソンでは2時間19分12秒の日本記録で優勝。08年北京五輪は直前に左太ももを痛めて出場辞退。16年4月に現役引退を表明し、同7月に一般男性との結婚を発表。19年1月から岩谷産業陸上競技部アドバイザーを務める。

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