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「お金、子どもを預ける場所、産休…」 6歳児の母、寺田明日香が語るママアスリートの課題

100メートルハードル日本記録保持者として活躍する寺田さん【写真:Getty Images】
100メートルハードル日本記録保持者として活躍する寺田さん【写真:Getty Images】

「ママアスリート」のサポートに必要なことは「お金、子どもを預ける場所、そして…」

 日本のスポーツでは、どの競技でも「女子選手は、恋愛をすると成績が落ちる」と言われやすい。男子選手と比べ、性別で影響に差が出るかは定かではないが、実際、峻一さんには「寺田の成績が落ちたら、お前のせいだ」という声も届いたという。

「ああ、そんな風に見られるんだと思いました。海外の選手は彼氏を当たり前にSNSに載せている。なんで、日本ではダメなんだろうと。振り返ると、高校生の頃からなんとなく恋愛はしちゃいけない雰囲気が漂っていて、不思議でした。もちろん、悪い方向に引っ張るパートナーは良くないですが、一緒に高めていける、ストレスになる部分を助けてくれる存在なら、相乗効果になるんじゃないかって」

 だから、今になって思う。

「競技に関わる人が、それを阻害したり、機会を奪ったりしてはいけないんじゃないかと思うので、何が根拠で選手の恋愛がダメとするのかは疑問に感じます。選手に限らず、性教育も日本はクローズドな部分がある。私も一人の娘を持ち、ママ友と『そういう話題っていつ話す? どう切り出す?』という話になるので、そんなところから少しずつオープンになれば、男女の関わりも広がると思います」

 窮屈だった女性アスリートの恋愛について、寺田さんらしさを感じるエピソードは交際を始めた直後のこと。大会を観戦した峻一さんに「あなたが見てくれていたから良い走りができた」と伝えたことがある。

「競技を見守る側は選手本人と同じかそれ以上に緊張するもの。それでも『大丈夫だよ』と前向きな言葉をくれるので、安心させないといけない。彼も『選手と付き合って大丈夫かな』と不安があったと思うので『私、大丈夫。そんなヤワな女じゃないから』と結果で示して、伝えました(笑)」

 そんな風に高め合える関係だったから、将来も自然と考えた。「もともと、わりと一人が好きで、経済力を身につけ、自分で生きていける力が身についたら、結婚しなくなる。そうすると欲しかった子どもを持てない」。そんな気もしていた。

 23歳で競技を離れたことを機に、結婚を前提に上京した。翌14年に入籍し、大学で児童福祉を学び、企業勤務も経験。そして、14年夏の出産から2年を過ぎた頃に受けたオファーで、7人制ラグビーに挑戦。峻一さんは起業後、本業の傍らマネージャーとして、サポートに回ってくれた。

 こうして挑戦した競技と子育ての両立。現実問題、「ママアスリート」は何が大変なのか。それを聞いてみた。

 まず、何よりも肉体的な負担だ。2年あまりのブランクで妊娠・出産を経験し、筋肉も落ちる。産後半年で参加したイベントでこっそり走ったら、一般の人より遅かった。加えて、過酷に練習で追い込んだ日は「気持ちがシャットダウン状態」になり、育児と両方をこなす負荷は大きい。

 もう一つは、育児の制度面。ただでさえ、待機児童が多い首都圏。アスリートの多くは通勤を前提としない個人事業主に分類されるため、一般の会社員・パートに比べると認可保育園に預けづらいという。寺田さんも空きが見つかるまで、峻一さんの母に助けてもらった。

 社会の理解という課題もある。練習・大会で遠征が多いアスリート。ラグビー挑戦当初、家に3日程度しかいない月があった。峻一さんがSNSでそんな奮闘ぶりを伝えると、「子どもが小さいうちに母が家にいなくていいのか。何のために競技をしているのか」という批判的な声が寄せられた。

 どれも子どもを持つことで直面した難しさ。しかし、ネガティブなことばかりじゃない。一つ一つ、壁を乗り越えるうち、やりがいも感じた。

 一番は「生理など、普通は聞きにくい婦人科関係の話題を後輩たちからすごくオープンに相談してもらえる」こと。一つのロールモデルになれていることを感じ、実際に「子どもを産んで戻ってこられるなら、私も産んで戻ってきたい」という声を聞いた時はうれしかった。

 一方で、後輩たちは「ママアスリート」を考える上で、何に一番不安を感じるのか。直に触れたリアルな声について、寺田さんは「まずはお金、そして、子どもを預ける場所。夫の理解、選手の所属先が産休を認めてくれるかもそうです」と明かし、次世代の想いを代弁する。

「一番必要に感じるのは、簡単に、かつ信頼して預けられる場所。無認可保育園さんに預けると、月で7~10万円。地域によっては10万円を超えますし、安心できる施設かも気になります。もちろん、夫の理解もないと難しいし、所属先も妊娠したら契約を切るということになれば、安心して競技を続けられない。夫の産休・育休も含め、少しずつ柔軟に考えられる世の中になってくれたらと期待しています」

 一つ一つが、女性アスリートにとって切実ながら公になりづらい問題。しかし、当事者である「ママアスリート」の発信には、価値がある。

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