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女子選手の「痩せすぎ」を判断する方法 体脂肪を「ただの邪魔なもの」と思う前に…

「痩せすぎ」を判断する計算式を紹介

 さて、体脂肪率を測定する方法はいろいろありますが、皆さんにとって身近なのはおそらく、家庭用の体組成計でしょう。これはぜひ、覚えておいてほしいのですが、体組成計で表示される数値は「推測した」値です。身長や体重と異なり、あくまでも、参考値でしかありません。

 体組成計で用いられている「インピーダンス法」では、体内の水分量が数値に影響。体内の水分量が増えたり減ったりすると体脂肪率も変わってしまいます。

 例えばご飯、お味噌汁を食べて水分量が上がれば、体脂肪率に影響しますし、尿や汗が出る、むくみのある・なしでも変わります。本来、脂肪は短期間で大きく増減することはありません。しかし、水分は食事や運動によって大きく変化してしまうため、簡単に体脂肪率の数値も変わってしまうのです。

 では、体脂肪率の気になる人は、何を基準に自分の体が「適正である」と考えればよいのでしょう? その一つがBMIです。BMIは肥満の判定方法として知られていますが、実は、女性アスリートの三主徴(利用エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗しょう症)のチェックとしても使うことができます。

(図1)女性アスリート1264人を対象に調査を行った結果、BMIが低くなるほど、無月経になる頻度が高い傾向がみられた【デザイン:野口佳大】

 アスリート1264人を対象に調査を行った結果、BMIが低くなるほど、つまり痩せているアスリートほど、無月経になる頻度が高い傾向がみられました(図1参照)。つまり、18.5未満は「痩せすぎ」であり、女性アスリートの三主徴に陥ってしまう可能性が高いと判断します。

 また、未成年のアスリートであれば、標準体重の85%未満かどうかが、「痩せすぎ」のラインの目安になります。今回、最後に計算式を紹介しますので、一度、計算してみてくださいね。

 個々の適正脂肪量について明確な数字は出せませんが、ここで一番お伝えしたいのは、パフォーマンスが低下するようなダイエットはしないでほしい、ということです。

 体重・体脂肪などの測定はコンディションの指標として測定するのは重要ですが、数字に固執してはダメです。数字の変化は目で見てわかりやすいため、「頑張っている自分」を認める証だと思いがちです。でも、体脂肪や体重の数値に固執し、体重・体脂肪の変動に一喜一憂するようになると、数値を変えるために食事を制限するようになり、筋肉や血液の材料となる栄養素が足りなくなります。

「体の一番の指標となるのは鏡だ」と言っていたボディビルダーの方がいたのですが、その言葉はストンと腑に落ちました。非科学的と思われるかも知れませんが、やはり、常日頃から鏡で自分の体をしっかり見ておくこと、そして、鏡に映る体つきや姿勢から、きちんと自分を評価することは大切だと思います。

 体を作る材料が入ってこなかったら、体はビルディングしていきません。自分たちはパフォーマンスを向上させるために体を作るのであって、体重や体脂肪率を下げるために運動をしているわけではない、ということを見失わないでくださいね。

成人女性であればBMI、未成年であれば標準体重から導き出す数値が、健康的な体=パフォーマンスを発揮できる一つの目安になる【デザイン:野口佳大】

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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